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「千代田CULTURE x TECH ビジネスコンテスト2025」が開催。今年度のAWARD受賞者が決まる
昨年以上の熱気に包まれたコンテスト
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会場のStartup Hub Tokyo 丸の内は満席に
千代田区で未来を切りひらく企業の皆さまが集まる「千代田CULTURE x TECH ビジネスコンテスト2025」を、2月14 日にStartup Hub Tokyo 丸の内で開催しました。当コンテストは、区内のスタートアップが自身のビジネスプランをもとに外部審査委員による評価を受けることが出来るだけでなく、資金調達やネットワーク拡大のきっかけを提供することで、スタートアップのさらなる成長を加速させることを目的にしています。
今年は、書類審査を通過したファイナリスト8社が登壇。たくさんの観覧者にもお越しいただき、会場は昨年以上の熱気に包まれました。審査委員には、Gazelle Capital株式会社の大谷直之氏(インベストメントチーム キャピタリスト)、東京女子大学の小西由樹子氏(現代教養学部 国際社会学科 准教授)、日本エンジェル投資家協会の山本敏行氏(代表理事/Power Angels CEO/ Chatwork創業者)の3名を招いて審査を実施しました。
当コンテストの審査は「新規性」、「市場性」、「課題性」の3項目を基本に行います。従来にない要素があり、新規性に富んでいるか。十分な市場規模を有し、他社と比較した際に優位性があるか。課題と解決手法が適切に設定されているか。これらの観点を満たしたビジネスプランについてファイナリストたちがプレゼンテーションを行いました。プレゼンテーション後には質疑応答があり、審査員からの事業展開や課題認識に関する鋭い質問に対して真摯に応答するなど、熱いやり取りが繰り広げられました。

左:伊藤氏(株式会社CoNCa)/ 右:鬼頭氏(フィールドクロス株式会社)
そして厳正な審査によって、今年度の千代田CULTURE×TECH AWARDには「フィールドクロス株式会社」(代表取締役社長 鬼頭和秀氏)と、「株式会社CoNCa(コンカ)」(代表取締役 伊藤博之氏)の2社が選ばれました。
スマートグラスで中小企業の課題を解決
フィールドクロス株式会社の鬼頭氏は自社製品のスマートグラスをつけて登壇。これが社会課題を解決する鍵を握る製品になります。同社は中小企業で人手不足に端を発した⼈材育成および技能伝承の課題に着目して、⽇本製の産業⽤スマートグラス「InfoLinker3」と現場⽀援クラウドサービス「LinkerWorks」を開発しました。

鬼頭和秀氏(フィールドクロス株式会社)
これによって例えば建設分野ではスマートグラスを着用したベテラン職人による遠隔OJTが可能になるほか、施工確認や点検業務を遠隔と現場でダブルチェックができるようになり、人手不足の解消や職人の暗黙知の見える化、移動時間の削減効果が期待されます。製品を直販した場合は、導入先の現場DXを伴⾛⽀援する取り組みも行っています。
また、鬼頭氏自身が過去にテレビや医療機器、VR、スマートグラスのメーカーで勤務経験があるため、現場に即したデザインと機能にもこだわったそうです。カメラやディスプレイが内蔵されたヘッドマウントと、スピーカーや通信機能などが搭載された本体を分離。鬼頭氏は「本体は肩に乗せられるようにして、スマートグラスを長時間つけていても頭への負担が少なく、作業しやすくなるデザインにしました」と話しました。

審査員の大谷直之氏(Gazelle Capital株式会社)
本コンテストのAWARD選出にあたっては、審査員の大谷氏から「千代田区の中でも中小企業、特に製造業や建設業という既存産業に対して現場の暗黙知をどう可視化させるのかという根強い課題に対してのチャレンジを評価しました。ハードウェアの完成度の高さも評価の項目でした」とコメント。登壇した鬼頭氏は「我々はスマートグラスを使って、中小企業の人材不足解消と技能伝承に取り組んでおりますが、現場ではまだまだ自分事だと思っていない方が多いと感じています。このような場での発信を通じて、中小企業の皆さんに製品を使っていただけるように頑張っていきたいと思います」と今後の抱負を語りました。
オンラインで産後女性の体をリカバリーする
株式会社CoNCaは産後女性の体をリカバリーするオンラインサービス事業「SOCO」(ソコ)を紹介。産後女性の多くが妊娠・出産に伴う身体不調やダメージを抱える中で、対処できる医療施設がなく、自分に適したケアがわからないという声が挙がっていたそうです。また、伊藤氏は起業に至った思いを次のように語りました。

伊藤博之氏(株式会社CoNCa)
「最初のきっかけは、私の友人がうつになって苦しんだ経験でした。うつの予防方法等をリサーチする中で、産後うつについて知りました。産後の官民によるサポート体制を調べたときに、心のケアをサポートする事業はありましたが、体のリカバリーを実施している事業は非常に少なかった。身体ダメージもメンタルに影響することを知り、この課題を突破していこうと思いました」
SOCOでは、まずビデオ通話などを通じて理学療法士とAIによる身体分析が行われ、その結果を踏まえて改善計画を策定。体の部位別リカバリープログラムが提供されます。これによって、オンラインでありながら質の高い産後リハビリを自宅で受けることが可能に。産後リカバリーの知見を持つメンバーと検証を繰り返して事業化にこぎつけたそうです。
世の中は少子化の時代を迎えていますが、高齢出産者割合の上昇などによって、女性の産後ダメージが深くなると想定しており、SOCOのニーズも高まると分析。事業展望としてはBtoCだけでなくBtoBにも取り組むことで、復職課題や女性活躍推進にも取り組んでいきたいとしています。

審査員の山本敏行氏(日本エンジェル投資家協会)
AWARDの贈呈にあたって審査員の山本氏から「理学療法士の知見や、AIのテクノロジーを活用してオンラインだけで産後女性の体のリカバリーが実現するという事業に取り組まれているところが非常に良かった」と選出理由が寄せられました。登壇した伊藤氏は「産前が注目される中、産後ケアの重要性を少しでもご理解いただけたのかなと思います。みんなで女性を支えていける社会作りにSOCOを通じて貢献していきたい」と、今後に向けて決意を新たにしました。
AWARD受賞ならずも、熱いピッチが披露される
一方で、この日はAWARD受賞にこそ至らなかったものの、千代田区の未来を切りひらく素晴らしいピッチが披露されたのも見逃せません。区内で祖父が開業した文房具店が半世紀以上の歴史に幕を下ろした光景を見て、中小企業を救いたいという思いを強くしたのはSHOPLINE Japan株式会社(ショップライン ジャパン)で代表取締役社長を務める大山廣貴氏。アジア最大規模のECサイト構築サービスを提供しています。
そして中小企業が自らアプリを作れる「Click」を発表したのは、MikoSea株式会社(ミコシー)の代表取締役CEOである工藤亮太氏です。プログラミング不要で簡単にアプリが作れるため、既に5万5千個のアプリが作られていると説明しました。


左:大山廣貴氏(SHOPLINE Japan株式会社)/ 右:工藤亮太(MikoSea株式会社)
さらに、ユーザーの利便性を高めるサービスは他にもありました。株式会社BANKEY(バンキー)の代表取締役・阪本善彦氏は、個人に対しての請求から回収・消込まで事業者の代金回収業をDX化する「Pay By Bank」を開発。株式会社vartique(ヴァルティーク)の代表取締役・秋炭直輝氏も、これまでVRゴーグルやハイスペックパソコンが必要だったメタバースサービスを、1クリックでアクセスできるウェブブラウザ型のメタバースサービスとして提供しています。


左:阪本善彦(株式会社BANKEY)/ 右:秋炭直輝(株式会社vartique)
また、昨年に続いてビジネスコンテストに挑戦した方もいました。一人は、日本美容創生株式会社の金山宇伴 代表取締役兼CEOで、更年期を迎える女性の健康対策を提供するため、タッチポイントとして「美容室」に着目して複数のソリューションを提供。もう一人の株式会社Alis(アリス)代表取締役・CEOの志強氏は、インバウンド需要が高まる中、多言語対応で宿泊客との電話などコミュニケーションをサポートするサービス「TABI CALL」を提供しています。


左:金山宇伴(日本美容創生株式会社)/ 右:志強(株式会社Alis)
今後に向けた審査員からのエール

審査員の小西由樹子氏(東京女子大学)
昨年以上の盛り上がりを見せた「千代田CULTURE x TECH ビジネスコンテスト2025」は、フィールドクロス株式会社と株式会社CoNCaが今年度の千代田CULTURE×TECH AWARDを受賞という結果になりました。受賞した2社には、今回の副賞として5月8日から10日に開催されるアジア最大級のスタートアップカンファレンス「SusHi Tech Tokyo 2025」に出展する千代田区ブース内に受賞企業の事業紹介スペースが準備されます。国内外から訪れる来場者との出会いによって、更なる事業成長が期待されます。
結びに、審査員の小西氏から全登壇者に対してエールが送られました。千代田CULTURE×TECHをはじめ、千代田区の創業支援に関する取り組みに引き続きご注目ください。
小西氏
「書類選考で選ばれた8人の登壇者の皆さんのピッチは見応えがありました。私が以前いた名古屋では過疎、農業をテーマにしたビジネスが多かったのですが、千代田区は中小企業、グローバル、区民という視点が多く、私も発見がありました。受賞されたお二方には、SusHi Tech Tokyoでビジネスのチャンスを広げていただきたいです。また、惜しくもAWRAD受賞には至らなかった登壇者の皆さまを含めて、この後の交流会で新たなビジネスチャンスのネットワークを作っていただき、新たなご縁ができることを楽しみにしております」

交流会で活発な意見交換も
【登壇した8社の皆さま】(登壇順)※
※リンクは外部サイト(各社のホームページ)