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ビジネスコンテスト2025受賞者インタビュー|株式会社 CoNCa

今年2月に開催された「千代田CULTURE×TECH ビジネスコンテスト 2025」で、「千代田CULTURE×TECH AWARD」に選ばれた受賞者へインタビューを行いました。

今回は、株式会社 CoNCa(コンカ)の代表取締役CEOである伊藤博之さんです。コンテストの感想のほか、開発した産後女性向けのオンラインリカバリーサービス・SOCO(ソコ)に関するお話や、コンテストの副賞(※)によって参加する「SusHi Tech Tokyo 2025」(5月8日~10日)も含めた今後の展望を伺います。サラリーマン時代のとある出来事から事業を立ち上げるまでのお話や、起業を考えている方へエールもいただきました。ぜひご覧ください。

※. 「SusHi Tech Tokyo 2025」に出展する千代田区ブース内に、受賞企業の事業紹介スペースが準備される

株式会社 CoNCa 代表取締役 CEO 伊藤博之氏

大学を卒業後、広告代理店へ入社。プロデューサーとしてクライアントの広告制作やプロモーション業務等に携わる一方で、2022年頃より産後女性向けのオンラインリカバリーサービスの開発に着手。その後、本格的な事業化に伴って起業。2024年に株式会社CoNCaを設立した。

親友をきっかけに社会貢献できる事業を模索

―― まず、起業に至るまでの経緯を教えてください。

きっかけは、僕が29歳のときに小学校からの親友がうつ病になってしまって、苦しんでいたことです。また、当時私は広告代理店に勤めていて、職場に朝も夜もないような働き方や人間関係等によるメンタルの問題で休職する人が多いことを認識しました。

その後、異なる広告代理店に転職したのですが、メンタルの問題で休職する方が定期的におられて、うつ病を予防したり緩和できたりするような事業を自分もできないかと考えたことが、始まりでした。

―― そこから「産後」に特化したサービスにするという事業構想にはどのように至ったのでしょうか。

うつ病になる人たちを自分でリサーチした結果、いくつかのグループに分けられて、その一つが産後でした。広告代理店ではプロデューサーとしてフィットネスクラブがクライアントでしたので、ヘルスケア領域の専門家とお話をする機会も多くて、産後の女性の体を整えることがメンタルの安定にも寄与すると教えていただいたんです。ただ実情として、産後ケアの体制は官民ともに十分ではなく、体のダメージや疲れがうつにつながるケースも多いことが分かってきました。

そこで、この領域なら自分が社会貢献できるかもしれないと思い、会社員をやりながら検証を始めました。

―― ピッチで、伊藤さんご自身は「男性で、結婚しておらず、子育ての経験もない」とおっしゃっていましたが、産後ケアの課題を「突破していきたい」とお話しされていました。その中でどうサービスを作り込んでいったのでしょうか。

今会社で一緒に働いている仲間を集めるときには、「何であなたがやるのですか?」とよく言われました(苦笑)。そんな中で、自分が貢献できる部分と起業に至る思いをセットで伝えて、少しずつ仲間が増えていきましたね。

サービスの作り込みについては、ターゲットが明確だったのでそこに対してインタビューの件数を重ねました。マーケティング職として働いていた経験を生かしつつ、出産された女性の自宅にお伺いして一日の生活を拝見もしましたね。既存の類似サービスを利用している方のニーズやインサイトも洗い出して、どういうサービスのエッセンスが必要になるかを明らかにしてから、SOCOのベータ版を用意して事業検証に移っていきました。

ですから、オンラインサービスにしたかったというより、オンラインでないと解決できない課題があったんです。ただ、人が介在せずに、全てオンライン画面上でガイダンスするだけのアプローチだとターゲットに馴染まないことも分かりました。そのためビデオ通話を通じた理学療法士とのコミュニケーションと、外部のAIツールによる身体分析を組み合わせながら、一人ひとりの産後女性の体に合ったリカバリープログラムを提供するサービスにしていきました。

―― 開発過程で苦労したことはありますか。

オンラインサービスのため、お客様に「自分の体の状態を本当に分かっているのか」と思われる心配がありました。そのため、どうやって精緻に体の状態を把握できるのか。このノウハウは、かなり労力をかけて開発しています。モニターを募って、AIツールでの分析結果とビデオ通話で理学療法士が見た結果の違いを分析して、開発を進めていきました。

AWARD受賞が、働く仲間のモチベーションに

―― そんな力を注いだサービスをビジネスコンテストで紹介いただきました。どういうきっかけでコンテストは、ご存知になりましたか。

千代田CULTURE x TECH(千代田カルチャーxテック/以下CCT)のオンラインコミュニティに入っておりまして、Slackでコンテストの案内を見ました。審査のポイントに「市場性」と書いてあったため、高齢出産や無痛分娩などの影響で産後ケアが必要な方が増えているとはいえ、少子化なので市場が他と比べて大きくないと思われるかもしれないと思い、事務局にその定義を問い合わせもしたんです。そしたら「事業が継続的に展開できる十分な市場規模があって、他社と比較した際に優位性があるもの」と回答をいただいて、それなら応募して大丈夫だと思ってエントリーしました。

―― コンテストに向けてどんな準備をされましたか。

あまりビジネスコンテストに出た経験がなく、5分のピッチだったので、どの部分をお話しするのか悩みながら、ピッチ資料を編集していきました。

―― 当日は多くの方が観覧に訪れ、会場も満員でした。登壇した時は緊張されましたか?

登壇中は緊張しなかったですね。待っているときの方が緊張しました(笑)。

―― お名前が呼ばれて、受賞パネルをもらった瞬間はどう感じましたでしょうか。

とても嬉しかったです。我々は社会を変えていくためのインパクトを重要視していますが、これまで産前ケアに着目が集まりがちだったため、産後ケアはそのインパクトが伝わりづらいのではないかと思っていました。

しかし、サービスへの課題感はあると認識していますが、今回のAWARD受賞で社会的に一定の評価や期待をいただけたと思っています。

それに何より一緒に働いているメンバーは、医療従事者として仕事をしてきた人も多い中で、行政から評価をいただけたことによって、非常にみんなのモチベーションが高まっているんです。時にはオンラインリカバリーサービスに対してネガティブなお声も寄せられるのですが、今回の受賞でやってきてよかったと、一同めちゃくちゃ喜んでいます。

―― その感想は、事務局としても嬉しいです。コンテストの最後には交流会もありましたが、収穫はありましたでしょうか。

僕は、持っていった名刺が全部無くなりました。育児領域向けにITサービスを展開している方から「一緒に連携できる部分があるかもしれません」とご連絡もいただきましたね。もともと期待していたつながりを得ることができました。

コミュニティに期待すること…ナレッジの共有

資料提供:株式会社CoNCa

―― AWARDの応募につながったコンテストはCCTのオンラインコミュニティに参加されていたことでご存知になりましたが、そのコミュニティはどのように知ったのでしょうか。

Startup Hub Tokyo 丸の内(創業支援施設)でメンタリングしていただいた、理学療法士の資格を持つメンターからの紹介です。開発に悩んでいることを相談に行ったんですよ。その時に有楽町で本社登記をしていると伝えたら、「CCTのオンラインコミュニティがあるので入っておいた方がいいですよ」と教えていただいて、すぐに申し込みました。

―― そこからのつながりだったんですね。CCTのコミュニティにいるメンバーとできたらいいなと思っていることはありますか。

やはりコミュニティに入っている企業のリソースやナレッジを共有していただきながら、お互いに貢献できる部分があれば、相互に使わせていただけるとありがたいと思います。加えて、千代田区の皆さんと連携ができれば、なお嬉しく思います。

―― ちなみに千代田区での創業には、理由があるのでしょうか。

何かと千代田区と縁があったんですよね。東京23区のスタートアップ支援を調べていた一方で、Startup Hub Tokyo 丸の内の創業支援に関するプログラムを受けていたりして、東京都の創業助成事業にも採択いただきました。

また、私の前職の勤務地が汐留だったため、近くの有楽町界隈で知見をくれる友人もたくさんいたんです。シェアオフィスも使い勝手の良いところが見つかり、まちも賑やかですから、千代田区有楽町で本社登記をしました。

起業は悩むより、小さな一歩を踏み出して

―― ありがとうございます。それでは今後の事業展開をどう描いているか、お聞かせください。

次のステップとしては、顧客数を増やしたうえで、今のサービスのどこを優先的に改善していくべきか、マーケティングテストを行いたいと考えています。また、AIツールも産後女性に特化させたモデルの開発を進めていく必要があるため、資金調達を予定しています。

そしてサービスを改良したのち、集客の強化やBtoB領域の事業拡大に進むでしょう。

―― BtoB領域については、コンテストでも発表されていました。具体的にはどんな内容を計画しているのでしょうか。

働く女性によっては、産後にできるだけ速やかに復職をして、なるべく出産前と同じペースに近づけて、育児と仕事を両立させたいという方が少なくないと、顧客インタビューを通して認識しております。

そうしたニーズに対して、企業によっては産後の早期復職プログラムを設けていらっしゃいます。内容は移動時のタクシー料金の補助やベビーシッターの費用負担などですが、その選択肢の一つとしてSOCOのサービスを企業向けプログラムとして提案できるのではないかと考えています。妊娠前のビジネスパフォーマンスが発揮できないという声が、アンケートを通じてもたくさん寄せられています。

体を産前の状態に整えるサポートができれば、ご本人の思いも叶えられますし、企業の生産向上にも寄与できると思っています。

―― また事業拡大という意味では、今回の副賞で参加される「SusHi Tech Tokyo 2025」は海外の来場者が多い展示会です。海外でのサービス展開の可能性はあるでしょうか。

展開は可能だと思いますが、リサーチはこれからになるでしょう。韓国やアメリカ、フランスなどは日本以上に産後リカバリーの取り組みが進んでいると聞いておりますが、人口が多く、経済成長が見込めるアジアの一部の国ではそういった取り組みがまだとも予想されます。産後リカバリーのニーズがどれぐらいあるのか。「SusHi Tech Tokyo 2025」では市場探査ができるかもしれませんね。

―― CCTの読者には起業を考えている方が数多くいらっしゃいます。経験談を踏まえて、最後にどんな言葉を掛けられるでしょうか。

起業は悩みに悩んでやるより、今の仕事と並行してスタートさせるのがいいと思います。私も会社員をやりながら、事業構想や検証を夜や早朝、週末を使って少しずつやりはじめました。起業には大それたイメージがあるかもしれませんが、小さな一歩が何につながるかを考えたうえでスタートされてはどうでしょうか。

そこから、お金をかけていかないと次の検証ができない、自分の力を100パーセント注がないと前に進めないフェーズになったら独立をする。そういう柔軟な考えもひとつですよ。

【イベント情報】SusHi Tech Tokyo2025

・日時|ビジネスデイ <要 チケット購入>
    5月8日(木)、9日(金)9:30~18:30

    パブリックデイ<無料解放 / 要 事前登録>
    5月10日(土)10:00~18:00(9:30受付開始)

・場所|東京ビッグサイト(〒135-0063 東京都江東区有明3丁目11-1)
    >>受賞企業は、千代田区ブース内で事業紹介をしております

イベントの最新情報は、公式ホームページをご覧ください(リンクは外部サイト)

お話を伺った企業

株式会社 CoNCa(コンカ)
2024年6月設立。産後女性向けのオンラインリカバリーとボディメイクサービス SOCO(ソコ)をメインに事業展開をしている。社名は、代表の伊藤氏が「正論を振りかざさない」という自らの戒めを社名に込めたいという考えからメンバーと相談し、その意味に英語で最も近い“Correct and Caring”の頭文字を取ってネーミングされた。現在、30名のメンバーと事業拡大へまい進している。