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協業の法務知識を備える…「千代田CULTURE x TECHアクセラレータープログラム2025」DAY3を開催
業務提携における契約実務に注目

千代田CULTURE x TECH は9月2日(火)、「千代田CULTURE x TECHアクセラレータープログラム2025」のDAY3を開催しました。5日間ある座学も、あっという間に折り返しです。この日のテーマは「法務」。講師に法律事務所ZeLo 弁護士の伊藤龍一氏(第一東京弁護士会所属)を招いて、『スタートアップと大企業の業務提携における契約実務解説セミナー』を実施しました。
セミナーは「業務提携」「資本業務提携」という2つのトピックスで構成。伊藤氏は、スタートアップファイナンスやストックオプションの設計発行、スタートアップと事業会社間の業務提携における契約支援などに従事しているため、実践的な解説が行われました。採択者にとっても事業成長を目指していく上で考えるトピックスであるため、活発な質疑応答があったのも印象的でした。
提携の目的を踏まえた検討が必要

まず、業務提携について伊藤氏は、技術・生産・販売などの業務で企業が協力し、経済的メリットを得る取り組みと説明した上で、典型的な業務提携の類型と留意点を整理しました。
特に、留意点として示されたひとつが、業務提携先の性質・提携の目的を踏まえた検討が求められる点です。例えば、将来的に複数の企業と提携する想定であれば、特定の業務提携先の「色がつく」ことを避ける工夫が必要であると指摘しました。さらに、「合意した内容は明確化しておくことが望ましい」としつつも、その規定内容によってはスタートアップにとって過度な負担となる可能性もあるため、留意する必要があるとも伊藤氏は話しました。
また、共同研究の開発成果に関する知的財産権の帰属・使用や、販売提携における各種条件などにも言及。将来的な事業展開やのそのスピード、他社との取引機会への影響といったさまざま観点から検討が必要であると示しました。業務提携は前向きな取り組みであるだけに、スタートアップならでのスピード感を大切にしながら、石橋を叩いて渡るような姿勢も心に留めておきたいところです。
「自信をもって大企業との提携に臨んでほしい」

続いて伊藤氏は、業務提携に際して当該業務提携から経済的利益も享受するために、事業会社やCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)がスタートアップの株式を引き受ける資本業務提携もよく見られると説明しました。
そして、事業会社・CVCとスタートアップのそれぞれにとってのメリットも解説。事業会社・CVCからすれば、出資によって事業戦略的なリターンと、財務的なリターンを見込めるとしました。一方でスタートアップからすれば、事業会社・CVCにはVC(ベンチャーキャピタル)のように明確なエグジットの期限がなく、長期的視点に立って事業開発がしやすい、業務提携による販路拡大などの具体的なビジネスメリットを獲得しやすいといった特徴があると説明しました。

ただ、留意点も挙げられました。例えば、スタートアップに対する出資は業務提携の成果が見通せない中で行われるものでありながら、一度行うと元に戻しにくい性質があるという点です。また、将来のラウンドも見据えて、投資関連契約において不相当な権利を設定しないことが重要であると述べた上で、投資関連契約を締結する際のポイントを具体的に指摘しました。
セミナーの結びには、伊藤氏より「大企業との交渉時はスタートアップ側が心理的に気おくれしてしまうこともあるが、適切な知識と対応をしていけば、提携は双方にとってメリットがある。まずは早めに、専門家へ相談してほしい」とコメント。さらに「スタートアップには、自信をもって大企業との提携に臨んでほしい」とエールも寄せられました。
Day4は「資金調達」がテーマ
座学後半戦となる次回のDay4(9/29開催)は、パートナーズファンドで代表パートナーを務める種市亮氏を講師に迎え、『エクイティとExit(VCの選定方法、資本政策、契約の注意点等)』を開催します。区内スタートアップの深い学びの機会となるように、千代田CULTURE x TECHでは引き続き取り組みを進めていきます。