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テーマは資金調達…「千代田CULTURE x TECHアクセラレータープログラム2025」DAY4を開催
CVC・VC経験のあるエキスパートから学ぶ

千代田CULTURE x TECH は9月29日(月)、「千代田CULTURE x TECHアクセラレータープログラム2025」DAY4を開催しました。この日のテーマは「資金調達」。講師にパートナーズファンドで代表パートナーを務める種市亮氏を迎え、『エクイティとExit(VCの選定方法、資本政策、契約の注意点等)』を実施しました。
これまでにCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)やVC(ベンチャーキャピタル)の立ち上げ、複数の投資実行を経験してきた種市氏。実務のエキスパートから、スタートアップが知っておくべき資金調達の基礎や、VCからの資金調達(エクイティファイナンス)に関する実践的な知見が説かれました。
事業立ち上げ期にどう資金調達するのか

この日の講義では改めて「スモールビジネス」と「スタートアップ」という起業形態の違いが示されました。認識が曖昧になりがちなワードですが、明確にすることにより、資金調達に向けて自社にあった取り組みができるようになります。
スモールビジネスは、起業初日からキャッシュフローを生み出すことが求められ、1年目から黒字を目指します。生み出した利益を元手に、再投資の規模を大きくすれば、事業は一次関数的な安定的成長へ。Exit(=上場やM&A)への外的な圧力はありません。
対して、スタートアップは外部調達した資金をプロダクト等へ投資し続けて、5年から10年先の壮大な事業拡大を目指します。ネットワーク効果や段階的な収益化策により、二次関数的に急激な成長曲線を描きますが、外部からExit機会の提供も求められるのです。
この違いを踏まえた上で、事業の立ち上げ期における資金調達手段(キャッシュイン)はどうやるのか。ひとつが「自己資金と再投資」です。低リスクで、自由度が高いメリットがあるものの、事業成長のスピードが遅いというデメリットがあります。
一方で、資金を外部調達する手法もあります。ひとつが「銀行借入(デットファイナンス)」です。最大数千万円の調達が見込めますが、返済義務があり、元本に加えて利息の支払いも。種市氏は「銀行の融資判断は、スタートアップのJカーブモデル(初期の赤字)に対して厳しい傾向がある。実績の無い状況だと極めて使いづらい」と指摘しました。
そして、もうひとつが「株式増資(エクイティファイナンス)」です。自社の株式を新規発行し、投資者は会社の株主としての権利を保有。調達可能額は数千万から数十億とも言われますが、株主が増えるため経営面でデメリットが生じる可能性もあります。
増資の鍵は、VCとのコミュニケーションにあり

また、大型の資金調達を見込める株式増資ですが、VCから増資を受けるには条件を満たす必要があります。その観点は種市氏から4つ示され「① Market(トライするテーマ)とPain(解決すべき課題)が大きく顕在化し、解決策があるのか」「② テーマに対してFounder / Team(誰がやるのか)のフィット感が高いのか」「③ 解像度の高い仮説と初期検証が効果的で、良い結果を得られているのか」「④ 必要なマイルストーンと、資金計画が明確であるのか」。さまざまな視点で、事業を磨き上げることが求められます。
さらに増資の実現には、VCとの円滑なコミュニケーションが鍵を握ります。具体的に、種市氏はVCとのコンタクト方法として「スタートアップ起業家からの紹介が最も響く」と説明します。VCの役割も“リード”と“フォロー”があり、前者は単独で投資の意向・条件を意思決定してラウンドの過半数を投資するほか、ハンズオン支援も期待されます。後者はラウンド必要金額の充足を期待され、リードが決めたタームに乗るかどうかを判断します。両者の違いを知り、戦略的なアプローチが株式増資の成否を分けるでしょう。

加えて、種市氏は東京証券取引所市場グロースの上場維持基準の見直しなど、Exit環境が変化している市況も指摘。「資金調達計画の見直しが必要になっているケースもある」と話しました。最近ではM&Aを明確に目指す計画を持って資金調達をする事業者も増えているそうです。スタートアップの成功には、柔軟な経営判断も必要不可欠なのです。
Day5は「ピッチ」がテーマ
最終回となるDay5(10/15開催)は、株式会社idscopeで代表取締役を務める細江裕二氏を講師に迎えます。テーマは「ピッチ」。ビジネスコンテストや資金調達の場面で求められるスキルです。この機会を通じて体系的な学びを採択者の皆さんへ提供します。