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Tokyo Innovation Baseで次世代のリーダーたちが熱いピッチ…3度目の「千代田CULTURE x TECH ビジネスコンテスト2026」を開催

過去最大の熱気に包まれたコンテスト。今年はTokyo Innovation Baseにて開催

 

千代田区内で未来を切り拓くスタートアップが集結する「千代田CULTURE × TECH ビジネスコンテスト 2026」が、2月13日に「Tokyo Innovation Base」(TIB:東京イノベーションベース)で開催されました。本コンテストは、区内のスタートアップが自らのビジネスプランをもとに外部審査員による評価を受けるだけでなく、資金調達やネットワーク拡大の機会を掴み、さらなる成長を加速させることを目的としています。

3回目を迎えた今年は、事前審査を勝ち抜いたファイナリスト7社が登壇。会場には起業家、投資家、地域コミュニティを支える関係者が多数駆けつけ、昨年を上回る熱気に包まれました。

地域を越えて、挑戦が加速する。愛媛県のデジタル実装検証プロジェクト「トライアングルエヒメ」

 ピッチ審査に先立ち、愛媛県デジタルシフト推進課の宇髙浩平氏がオンラインでゲスト登壇しました。紹介されたのは、愛媛県が推進する国内最大級の実装検証プロジェクト「トライアングルエヒメ」です。

 宇髙氏は、デジタル技術を武器に地域課題を解決する愛媛県の取り組みを解説。スタートアップの挑戦を強力にバックアップする事業の枠組みを紹介し、「千代田区で生まれた素晴らしいアイデアや技術を、ぜひ愛媛のフィールドで社会実装してほしい。都市部スタートアップと地方の事業者が、共に成長する『三方よし』のモデルを共に作りましょう」と熱いメッセージを送りました。

時代を拓くアイデアが集結。スタートアップの最前線で活躍する審査員による厳正な審査

 高まる期待感の中、いよいよファイナリスト7社によるピッチが幕を開けます。この挑戦を受け止め、次世代のビジネスの真価を見極めるべく、スタートアップシーンの第一線で道を切り拓く3名のスペシャリストが審査員席に集結しました。
まずは、経営学の知見から人材育成とリーダーシップを探究し、理論と実務の双方の視点を持つ、東京女子大学准教授の小西由樹子氏。続いて、日本を代表する起業家育成のプロフェッショナルであり、『起業の科学』の著者として知られる株式会社ユニコーンファーム代表取締役の田所雅之氏。そして、数々のベンチャー投資やスタートアップ支援に精通し、マーケットの本質を鋭く突くパリパス株式会社代表取締役の和田誠一郎氏です。

本コンテストの審査は、「新規性」「市場性」「課題性」の3項目を軸に行われました。各社に与えられた時間は5分間。限られた時間で、自らの事業がいかに独創的で、巨大な市場可能性を秘め、切実な社会課題を解決するものであるかを証明しなければなりません。プレゼンテーション後の3分間の質疑応答では、審査員から事業の核心を突く鋭い質問が次々と飛び、会場は緊張感に満ちていました。 多角的な知見を持つ3名が、千代田の、そして日本の未来を担うビジネスプランを、厳しくも温かい眼差しで審査しました。ファイナリストによるプレゼンテーションと質疑応答を経て、今年度の「千代田CULTURE×TECH AWARD」には、株式会社コズム(代表取締役 橋本優希氏)と、株式会社BANKEY(代表取締役 阪本善彦氏)の2社が選出されました。

20人のうち1人が検査員という目視検査を、AIと現場力の融合で解き放つ

 株式会社コズムの橋本氏は、製造現場において全従業員の約20人に1人が従事しているという「目視検査」の自動化をテーマに登壇しました。現在、日本の製造業は「2040年問題」に伴う深刻な労働力不足と、熟練工の引退による技能伝承の限界という、大きな課題に直面しています。

 この困難な状況に対し、同社はAIとロボティクス、さらに「生成AIによる画像合成技術」を独自に組み合わせた検査システムを開発。従来のAI検品では、学習に不可欠な「不良品データ」の収集が最大の壁でしたが、同社の技術は良品データから不良品を擬似生成することで、データが少ない現場でも迅速な導入を可能にしています。また、既に大手企業で大幅な省人化を実現していると実績を提示。橋本氏は「日本の強みである製造業を、テクノロジーの力で守り抜きたい」と熱く語りました。

本コンテストのAWARD選出にあたっては、審査員の和田氏から「取り組まれている課題設定と市場規模が非常に大きいところに対し、最先端の技術で解決に取り組まれている。既に大きな競合がいる領域でも、ニッチバーティカルにプロダクトをグッと差し込んで勝ちにいこうという『スタートアップらしさ』をすごく感じました」と、同社を称えました。

受賞のパネルを手にした橋本氏は、万感の思いを込めてこう語りました。
「素敵な賞をいただき感慨無量です。日本の製造業は価値の根源です。人口減少は必ず来ますが、テクノロジーがあれば安心して発展し続けられる日本にしていければと思います!」
日本の製造業をテクノロジーで守り抜くという橋本氏の強い覚悟に、会場からは期待を込めた拍手が送られました。

2年連続の挑戦が実を結ぶ。金融インフラの「消し込み」を自動化

 もう1社の受賞企業、株式会社BANKEYは昨年度に引き続き2年連続でファイナリストに選出されました。阪本氏によるピッチは、1年間事業を磨き上げた末の再挑戦でした。同社が展開する「Pay By Bank」は、銀行APIを活用することで、請求データと支払手続きをダイレクトに繋ぐ次世代の決済サービスです。

 現在、多くの企業では、入金確認(消し込み)業務に1社あたり平均月間170時間もの膨大な時間を費やしています。同社のサービスはこの課題を解決し、現在は特に海外送金で信頼を獲得しています。さらに会場を驚かせたのは、今年4月からの展開予定です。ある大手金融機関との接続方式変更により、これまで最大のハードルであった「インターネットバンキングへのログイン」を不要とし、キャッシュカード1枚で決済が完了する、革新的なUXを実現。阪本氏は「千代田区は日本の金融の中心地。この地からグローバルスタンダードを作る」と力強く宣言しました。

 2年連続で審査員を務めた小西氏からはAWARD選出にあたり、「去年は銀行との連携がまだ取れていないというところがネックでしたが、今回はそこを突破し、海外送金への拡大や大手金融機関さんとの連携まで進まれました。本当に受賞にふさわしい成長を遂げられたと思います」と、前年からの進化を称えました。

 1年前から大きく成長した阪本氏は、今後の意気込みとともに受賞の喜びを語りました。
「このような賞を頂戴しましてありがとうございます。フィンテックはとにかく難しいので、ピッチは聞き手がわかりやすいように心掛けております。千代田区は金融の中心。ここで日本のグローバルスタンダードを作るという自負を持ってやっていければと思います!」
昨年の悔しさを糧にプロダクトを研ぎ澄ませ、再び挑んだ阪本氏の思いは、会場にいた皆の胸を熱くさせました。

AWARD受賞ならずも、熱いピッチが披露される

 この日はAWARD受賞にこそ至らなかったものの、千代田区の未来を切り拓く素晴らしいピッチが披露されたのも見逃せません。

 まず、建設業界の構造的課題に切り込んだのは、株式会社建設楽楽カンパニーの中川優志氏です。人手不足と多重下請け構造の中で現場職人が事務作業を強いられている現状を指摘。AIによる自動化とBPO(事務代行)を組み合わせ、現場負担を劇的に削減する「現場ファースト」な解決策を提案しました。業界の「ラストワンマイル」を泥臭く解決する姿勢が高く評価されました。

 続いて、サニーズ株式会社の中澤望氏は、個人のパスワード管理不全が引き起こす「デジタル遺産」問題に着目し、家族向けパスワード管理サービス「Privaco」を紹介。マイナンバーカードによる公的個人認証を活用し、万が一の際にも家族へ安全に情報を引き継ぐ「デジタル終活」の形は、超高齢社会における必須の安心材料として注目を集めました。

 クオンクロップ株式会社の北垣卓氏は、食農特化型AI「Myエコものさし」を発表。環境負荷の低減を精緻に数値化し、それを商品の差別化やブランディング、ひいては販売単価の向上という「企業の直接的な利益」へ転換するロジカルなマーケティングモデルを披露しました。

 また、合同会社櫻井機創ウェルネスの濱田初佳氏は、シャワー設備を「コスト」から「利益を生む資産」への転換を提唱しました。濱田氏が提案するのは、塩素除去装置を組み込んだ「スイミングゲート」です。特殊な形状により効率的に塩素を除去することで水質管理コストを劇的に削減するだけでなく、ゲート自体を「広告メディア」として活用し、配信収益を得るという仕組みを披露。既存のインフラを収益源へとアップデートするモデルを強く印象付けました。

 そして、デジタル社会の安全を根底から支えるインフラ構想を語ったのは、X-shield株式会社の石川裕也氏です。太陽フレアや電磁波攻撃(EMP)という国家レベルの脅威からデータセンターを守るため、防衛省基準を凌駕するシールド性能を誇る特許技術を備えた特殊サーバーラックを紹介。DXが進むほど増大する物理的な脆弱性に対し、未開拓の市場へ先陣を切る防災インフラの重要性を訴えました。

審査員からのエール…「人間臭さ」でテクノロジーの先にあるラストワンマイルを突破

 すべてのピッチが終了した後、審査員を務めた田所雅之氏から、登壇したファイナリスト全員へ向けて、今後の事業成長の指針となる熱いエールが送られました。

 田所氏はまず、昨今の生成AIの爆発的な進化により、テクノロジーそのものが驚異的なスピードでコモディティ化している現状を指摘しました。「技術的な優位性だけでは差別化が難しい時代において、最後に勝敗を分けるのは、AIには決して代替できない『現場のラストワンマイルを突破する人間臭さ』である」と強調。「起業家自身がどれだけ現場に深く入り込み、生身の人間の悩みや日々の業務にある小さな喜びに寄り添えているか。その徹底した『現場の解像度』こそが、単なるツールとしてのプロダクトに血を通わせ、魂を吹き込む」と熱く語りかけました。

 また、コンテストの舞台となった千代田区についても言及し、「千代田区は伝統的な中小企業の現場と最先端のテック、そして国を動かすキーパーソンが交差する、稀有な魅力に溢れた場所です。ここに拠点を置き、現場のリアルな課題とテクノロジーを掛け合わせた事業が生まれることを期待しています」とエールを送りました。

 締めくくりには、「今、私たちの周りにあるプロジェクターも、パソコンも、スマートフォンも、かつては誰かの『新規事業』であり、誰かが信じた『スタートアップ』の産物でした。5年後、10年後の未来から現在を振り返ったとき、今日皆さんが発表した事業が社会の不可欠なインフラとなり、人々の生活様式を変えている。そんな未来を期待しています」と言葉を贈り、会場は挑戦者たちを称える温かい拍手に包まれました。

 受賞した2社には、副賞として2026年4月27日~29日に開催される「SusHi Tech Tokyo 2026」にて、千代田区ブース内での事業紹介スペースが提供されます。千代田区から生まれる挑戦は、ここからさらに世界へと加速していきます。

【登壇した7社の皆さま】(登壇順)※

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