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ビジネスコンテスト2026受賞者インタビュー|株式会社コズム

3度目の開催を迎えた「千代田CULTURE×TECH ビジネスコンテスト 2026」。今年も審査によって「千代田CULTURE×TECH AWARD」に選ばれた注目の受賞者(2社)へインタビューを行いました。

その一人は、株式会社コズムの代表取締役社長、橋本優希さんです。大学卒業後すぐに起業した背景を振り返るとともに、当コンテストで発表したAI技術を活用した目視検査工程の自動化の取り組みや、コンテストの振り返り、副賞によって参加する「SusHi Tech Tokyo 2026」(4月27日~29日)も含めた今後の展望を伺いました。

. SusHi Tech Tokyo 2026」に出展する千代田区ブース内に、受賞企業の事業紹介スペースが準備され

橋本優希|株式会社コズム 代表取締役社長CEO

慶應義塾大学商学部を卒業後、2022年11月に株式会社コズムを創業。2023年11月に同社と、プリント基板メーカー株式会社キョウデンとの合弁会社、株式会社KC技研を設立し代表取締役社長に就任(兼任)。2023年から株式会社キョウデンの取締役も務めた(翌年に退任)。経済同友会最年少会員。

ミュージシャンの夢から大卒後すぐ起業。でも「甘くは、無かった」

―― まず、起業までのキャリアについて教えてください。

まず学生の時に起業をしました。ただ、学生時代は商学部でしたが、そんなにビジネスへ興味があったわけではなく、ジャズサックスに熱中していました。大会で日本一を獲ったこともあり、ミュージシャンになるキャリアもあるのかなと考えてみたこともありましたね。でも、先々食べていくのが大変だなと気づきまして……(苦笑)。

より大きなインパクトを社会に残せる意味でも起業が良いんじゃないかと思いました。もともと起業一家でもあったので、自分もやってみたいという気持ちが自然と出てきました。それで思い立って登記をしたのが始まりです。

―― 在学中に起業の準備をされて、卒業と同時にコズムを立ち上げたんですか。

 いえ、準備はしていなくて。登記してみたら何か変わるかもしれないという淡い期待と、謎の自信がありまして、とりあえず登記をしたんです(笑)。いざ始めてみると、やっぱり甘くは無かったですね。

―― 起業後は、どのように苦労を乗り越えて今に至るのでしょうか。

紆余曲折はありました。最初は受託業務で売り上げを立てる時期もありましたが、コズムとしてプロダクトを持ちたいと思ってピボットした結果、製造業向けに開発をはじめました。

また、ご縁もあってキョウデンというプリント基板の中堅メーカーで取締役としてDXを推進するプロジェクトも任せていただいたんです。コズムと兼業でしたが、製造現場を一人称視点でどうDXしていくかを考える中で、様々な課題感も感じました。これをスタートアップとして解決していくのが、僕として一番筋がいいのかなと思って、今に至ります。

―― 製造業向けにピボットしようと思った原体験はありましたか。

取締役として会社を俯瞰して見ていた経験です。ものづくりの現場では、全体最適を図ることがものすごく難しい。サプライチェーンごとに部署があって、バリューチェーンごとに部署がある中で、それぞれにプロジェクトの進め方がある。複雑になってしまいがちな状況を解決するようなプロダクトを開発したり、営業ができたりするとインパクトがあると気がついたんです。

―― コズムとして、AIを活用したチャットツールや生産管理システムのプロダクトを展開されています。どのように開発されたのでしょうか。

最初はお客様の「困ってるんだけど」という相談に対して、それを解決できるようなプロダクトを作り始めました。ただ、納品をすればするほど、ソフトとハードが一体となって設計から開発をしていく、よりお客様の現場と同じ目線を持つ必要性を感じました。ひいては、経営的な目線で提案できるようになると、ものすごく課題に対して突破力があると思って、プロダクトを磨いてきましたね。

ですから、本当に商談を重ねました。テレアポや飛び込みもしながら「ここがこうなったら良いのに」というお客様が本当に困っていることを引き出し、どう実現ができるかをひたすら考えてきました。

「工数はかかってきますが」…AIを活用する中に、人が介在するこだわり

TESRAYのデモンストレーションを行う橋本さん

―― そんな中で目視検査工程を自動化するTESRAY(テスレイ)についてお聞かせください。

コズムとして、ソフトとハードが一体となったプロダクト開発をしていた中で、TESRAYは2025年12月にロールアップM&A(※1)したロビットで開発していたプロダクトになります。当社としてハードウェアの能力を得られて、会社の競争力がひと皮もふた皮も剥けました。

※.関連する同業他社を買収、統合して事業を成長させる手法。ロールアップM&Aに関するプレスリリース(外部リンク)

―― ロールアップM&Aをして事業をスケールされる取り組みは、以前から考えていたのでしょうか。

成長戦略としては正直あまり検討しておりませんでした。ですが、偶然にもロビットの新井(雅海)さん(※2)と知り合う機会があり、意気投合したんです。新井さんのビジョンやTESRAYのポテンシャル、当社の方向性を勘案して、M&Aに至ります。

※2. 現最高技術責任者

―― 改めて、TESRAYが持つ、一番の売りはどこでしょうか。

目視検査をDX化する上で、最も重要なポイントは、対象物の撮影と画像処理です。良い画像を撮像するだけでなく、AIが処理をしやすいデータに変換するノウハウが、我々の強みです。撮像方法に関する特許も持っております。また、対象物の小さな傷を浮き彫りにするため、撮像に必要な照明の制御や照明自体も内製して設計をしています。そのこだわりや、技術力の高さは自負がございます。

また、今後AIはより一層、コモディティ化されると想定しておりますが、その中でも特許を保持して強みとしております。例えばお客様によって違う不良品の判断基準を、独自の技術で区別し、さらに区別した内容を程度に応じてどう選別するのか調整ができるんです。

現場で使っていただくために、何が求められるのか。マーケットインの思考で開発をしております。

―― ピッチでは導入時に、製品の70%をカスタマイズされると話されていました。お客様ごとに良品・不良品の線引きが違うと思いますので、その調整は人が介在していくのでしょうか。工数や人手も結構かかりそうなイメージです。

まさに、そうですね。ラストワンマイルと言いますか、お客様の現場にいる検査員の方と打ち合わせを重ね、AIの学習データを作っていきます。そこの調整に関して我々は専門部署を設置し、こだわってやっております。

かなり人手や工数はかかってきますが、そこは我々の事業の生命線とも言えるでしょう。もちろん、ビジネスとしてはスケールしやすくて、手離れするのが理想的でしょうが、そこは現状の技術やお客様の求めるものを踏まえると、人が介在するのが最適解だと判断してやっております。

審査員からのフィードバック、来場者と交流…「有意義な時間に」

―― 千代田CULTURE x TECH ビジネスコンテスト2026へ、どんなきっかけで応募されたのでしょうか。また5分のピッチに向けて準備はいかがでしたか。

SNS広告をみたのがきっかけです。我々は本社が千代田区にありますので、「これは出ないわけにいかない」と思い、思い切って応募してみました。

これまで製造業向けのセミナーへ登壇して、現場の事例や技術的なお話をする経験が多くありました。しかし、今回は市場性や新規性など評価項目のあるビジネスコンテストであったため、審査員や会場の皆さまによくご理解いただけるよう、人手不足に立ち向かうというテーマの下、業界の課題や実情などマクロの話題にも比重を置いてお話しました。

また、これまで事業と地域の関わりは図れていなかったものの、ビジネスコンテストで一番大事な観点と思っていました。地域の人手不足といった課題を区役所の皆さんや、地場の事業者の方はリアルに捉えていると想像しております。そういう皆さまに、区内のスタートアップから課題解決につながる提案が出ていく状態をどうやったら作れるか。これを考えながらピッチに臨みました。

―― 審査員の皆さまからのフィードバックはどう感じましたか。

我々の強みや弱みを的確に突いていただけたと思っております。TESRAYは装置ですので大がかりな投資になりますが、再認識したのはお客様の費用対効果をしっかりと出していけるか。スタートアップの先進的な取り組みだから、研究開発費で賄うと考えられてしまうと、事業としてスケールしないと思います。現場でROIを1年目から出す状態を作る重要性を改めて感じております。

また、人が介在したラストワンマイルの取り組みを評価いただきましたが、まさに我々がこだわっているところです。これまでDXが図られていなかった工程ですが、これから対応が求められます。審査員から「WHY NOW」とお話しがあったように、今の時代だから必要な事業なのだと、改めて感じております。

―― 交流会では様々な方とお話しされたと思います。収穫はありましたか。

ものづくりに携わる来場者の方からは非常に良いフィードバックをいただき、中長期的な連携のお話をいただいたりもしました。有意義な時間になったと感じております。

―― 千代田CULTURE x TECH(CCT)ではビジネスコンテストのほか、オンラインコミュニティやミートアップなどイベントを通じて、交流機会を作っております。CCTに対して、これから期待することはございますか。

印象的だったのが、VCよりも銀行など金融機関の方が多くいらしていたことです。我々は基本的にデット(銀行借り入れ等)による資金調達をしていることもあり、金融機関の皆さんとお話をさせていただく機会を今後、期待しております。

また、ビジコンの時にご案内があった愛媛県の取り組みには興味があり、もっとお話を聞いてみたいです。当社には愛媛県にお客様もおりまして、地域課題をデジタル技術で解決する取り組みは、求めている支援でした。意外と東京にいると、地方自治体の助成金を活用できているケースは少ないと思います。地元を大事にするとともに、地方に対してスタートアップの新技術がリーチできる可能性が広がると、自社の事業成長にも地方の課題解決にもつながるのではないでしょうか。

起業する方へ。「お客様から気持ちよく教えていただくためにはどうするべきか」

―― TESRAYの導入が増えていると思いますが、今後の展望はどうお考えですか。

導入は増えているものの、リーチできているお客さまはわずかです。営業の再現性と拡張性が課題と感じています。採用やM&Aを行うなど組織や人材を強化し、この1年は事業を成長させていく時期だと思っています。

中長期的な成長戦略で言えば、点を面にしていきたいです。検査は工程の一部ですが、お客様から全体的に見てくれないかとご要望をいただくんですよね。我々はAIを実装したプロダクトも展開しているので、多面的にお客様が抱える課題にアプローチできると思います。ハードとソフト、AIを組み合わせれば事業のレバレッジが掛かって、非連続的な成長ができるのではないかと思います。

―― また、アワード受賞の副賞として4月に開催される「SusHi Tech Tokyo 2026」で事業紹介ブースを設置できます。どんな期待感がありますか。

普段はものづくりや工業系の展示会に出ているため、SusHi Tech Tokyoは我々が出展したことが無いタイプの展示会で、私も行ったことがなかった場です。ですから、これまでお話をする機会の無かったお客様と接点がとても広がると思っています。

―― SusHi Tech Tokyoは、海外からの来場客が多い、グローバル色の強い展示会です。TESRAYの海外展開も、イメージされているのですか。

いまは国内市場に注力していますが、お客様がアメリカやタイ、インドネシアなど海外に工場を持っているケースが非常に多い状況です。日本で成功例を作って、お客様の海外工場へ向けたグローバル展開ができるように準備を少しずつ進めていきたいと思います。

―― 最後に、これから起業を目指す方、また起業から間もない方へ、橋本さんからアドバイスをお聞かせいただけますか。

事業の成り立ちを振り返ると、お客さまに教えてもらうことが、99. 9%でした。どれだけ準備をしても、お客さまが「違う」と言えば、それは違うわけじゃないですか。ビジネスコンテストが終わった後の交流会でも、学生の方から起業に向けた準備の仕方を質問いただきました。

ですから、準備するべきは、お客様から気持ちよく教えていただくためにはどうするべきか。小さな価値を届けることを意識していくのが良いのではないでしょうか。そうすれば、結果として得られるものがあると思いますよ。

【イベント情報】SusHi Tech Tokyo2026

・日時|4月27日(月)、28日(火)9:30~18:30 ビジネスデイ <要 チケット購入>  
    4月29日(水・祝)10:00~18:00(9:30受付開始) パブリックデイ<無料解放>

・場所|東京ビッグサイト(〒135-0063 東京都江東区有明3丁目11-1)
    >>受賞企業は、千代田区ブース内で事業紹介をいたします

イベントの最新情報は、公式ホームページをご覧ください(リンクは外部サイト)

お話を伺った企業

株式会社コズム
2022年11月設立。「日本を代表する企業になる」というビジョンを掲げ、製造業をはじめとする様々な業界にDX製品・ソリューションを提供している。2026年2月にはAI・ソフト・ハードを融合させたクロスソリューションを提供する株式会社ロビットを子会社化。双方が強みとしているハードウェアとソフトウェアの設計から実装、運用までを一体で捉えた取り組みを強化し、顧客の課題解決を行っている。