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ビジネスコンテスト2026受賞者インタビュー|株式会社BANKEY
3度目の開催を迎えた「千代田CULTURE×TECH ビジネスコンテスト 2026」。今年も審査によって「千代田CULTURE×TECH AWARD」に選ばれた注目の受賞者(2社)へインタビューを行いました。
その一人は、株式会社BANKEY(バンキー)の創業者兼代表取締役の阪本善彦さんです。昨年に続いて当コンテストに応募され、念願のAWARDを受賞。起業までのキャリアを振り返るとともに、請求と支払いをつないで消込を自動化する「Pay By Bank」※1の取り組みや、副賞※2によって参加する「SusHi Tech Tokyo 2026」(4月27日~29日)も含めた今後の展望を伺いました。
※1. Pay By Bankは今後「かんたん振込Payペイ」にサービス名が変わります
※2.「SusHi Tech Tokyo 2026」に出展する千代田区ブース内に、受賞企業の事業紹介スペースが準備される

阪本善彦|株式会社BANKEY 創業者 兼 代表取締役
東京大学農学部卒業後、2008年に三菱東京UFJ銀行(現:三菱UFJ銀行)へ入社。2016年から三菱UFJフィナンシャル・グループ経営企画部(銀行兼務)でデジタル戦略、新規事業を担当。海外経験を機に起業を考え、2021年に退職。同年1社目を共同創業。その後退任、2023年に株式会社BANKEYを創業した。
銀行員時代にエストニアへ。海外経験が起業の大きなきっかけに

―― どんなキャリアを歩まれて、起業されたのかお聞かせいただけますか。
奈良県から上京して東京の大学に通っていたのですが、就職活動ではいろいろな産業に関わりたいという思いから、ご縁もあって銀行を選びました。入行後もおかげさまで、造船やインフラ、航空業界など幅広い産業に携わることができたんです。様々な産業の横串として、金融はどうやったら貢献できるのか。この思いを持ちながら、銀行員生活を送っていました。
ですが、コロナ禍の前あたりからですね。経営企画職として銀行のデジタル化という課題に向き合うにあたり、海外事例の研究を始めたときのことです。金融のデジタル化が進むエストニアなどヨーロッパに足を運ぶ機会に恵まれ、産業の裏側に金融が溶け込み、ビジネスを円滑に動かす機構として動いている状況を目の当たりにしました。
一方で、日本でそのようなことをやりたいと思うと難しいんです。日本の銀行は世界的に見て、世の中から信用され、信頼を得ているため、良い意味で存在が強い。しかし、もっと産業のために黒子として動くのが銀行の役割ではないかと、ヨーロッパを訪問して強く感じたんです。銀行員生活を送る中で、僕が実現したいと思っていた世界に実際に触れた経験が、起業の大きなきっかけになりました。
―― その原体験が、BANKEY以前にされた1社目の起業につながるんですね。
エストニアで知り合った方から「日本で働く海外の方向けにバンキングサービスを提供したいから手伝ってほしい」と相談をされました。僕の思いが実現できますし、やるべきだと思って。会社に相談もしたのですが、副業は認められなかったため退職をして、共同創業者として1社目の起業に至ります。
ただ、サービスローンチはできたものの、バンキングサービスを提供すると黒子ではいられないわけです。ユーザー獲得のため表に出ていく必要がありますが、やはり大変で……。僕は黒子として金融を産業の裏でいかに駆動させるか。ここに挑戦したくて、別の道を歩むことにしました。
BANKEYの創業前には、外国籍の方のインタビューを重ねたんです。「給料口座から簡単に海外送金できない」「銀行に依頼しても、手続きの書類が多く手数料も高い」など、苦労の声をたくさんいただきました。
でも、僕が視察したヨーロッパではアプリから銀行口座にアクセスしてお金を動かせるサービスがありましたので、その課題は解決できそうだと思ったんです。日本の規制の乗り越え方も見えてきて、2023年9月にBANKEYを設立しました。千代田区に会社を構えるのも、大手町に代表されるようにこの地域が金融のまちだからという考えもありましたね。
最も大変だった「銀行の説得」…サービスリリースまでに苦労も

―― ヨーロッパ視察が起業の原体験とのお話がありましたが、それまではキャリアに起業という選択肢は無かったということでしょうか。
本当に予想していなかった起業でした。
一方で、大学時代には農業経済が研究テーマでした。発展途上国の農業分野でどう金融をしつらえていくか。自分が恵まれた環境で勉強ができ、社会に出られたので、この体験は生涯かけて社会へお返しをしないといけないという思いも、ずっとありました。
その思いが銀行に入り、金融を通じて産業の成長を助ける役割を担う中で形にできました。ヨーロッパで、黒子として貢献できるとも分かりました。でも、日本だと誰もやっていない。だから、僕がやらなきゃいけない。じゃあ、起業しようと。ある意味で、必然だったとも感じています。これは、妻を説得するときに話した内容でもあります(笑)。
―― 2025年7月にサービスを開始しました。2023年9月の創業からPay By Bankの完成まで、大変だったことは何でしょうか。
最も大変だったのは、銀行の説得ですね。
僕も元銀行員なので分かりますが、銀行はお客様にトラブルがあってはいけないという、強い責任感があります。そのため、外部とシステムをつなぐためにはものすごく厳しい審査があります。また、決済機能なので当たり前ですが、システムが止まってはいけないし、セキュリティの穴がないことを証明しないといけません。
銀行の方にご理解いただくため、労力と時間がかかりましたし、プロダクトも安全性高く設計・開発を進めていきました。
―― 銀行の商習慣を身に染みて理解しているのが、大いに生きたわけですね。
すごく生きました。少し話は脱線しますが、千代田区で金融事業をやるというのは採用にとって分かりやすいメッセージになりました。スタートアップですが事業性質上、きっちりやる必要があるため、創業の早い段階からISO27001も取得しています。
当社に入ってきた仲間たちもそれを理解してくれて、少し背筋が伸びるみたいなところもありました。副次的に、千代田区で金融事業をやるメリットも感じています。
2度目のチャレンジ。ピッチの話題を月謝回収から海外送金に変えたワケ


―― ビジネスコンテストには2度の挑戦で、念願のアワード受賞をされましたが、そもそもどんなきっかけで応募されたのでしょうか。
昨年、SusHi Tech Tokyoのスタートアップピッチの応募を考えていたときに、たまたまSNSの広告を見て、千代田CULTURE×TECHのビジネスコンテスト開催を知りました。面白そうですし、ビジネスコンテストで賞が取れればSusHi Tech Tokyoに出展できるのが、魅力的だと思って去年は応募しました。
ただ、今年は応募を迷っていたんです。でもやっぱり、この時期になって広告を見かけて、2度目のチャレンジを決めました。
また、取引先や投資家と異なり、利害関係の無い審査員からフィードバックをいただけたのは、意味が大きいと感じています。他のイベントでピッチをする機会がありましたが、アンケート結果を共有いただける程度です。去年、Gazelle Capitalの大谷(直之)さん、東京女子大学の小西(由樹子)先生、日本エンジェル投資家協会の山本(敏行)さんからコメントをいただけた体験がすごく良かった。今年もフィードバックをもらいに行こうと思ったことも、応募を決心した理由です。
―― サービスをローンチされたこともあって、発表資料の内容も大きく変わりました。この1年の成果を意識されて、ピッチには臨んだのでしょうか。
我々としてはスタートを切って、事業成長を加速できるとお伝えできるタイミングにもなりました。具体的な数字も含めてお話ができるようになったのは、この1年の進捗だと思っております。
―― ピッチでは昨年、学習塾の月謝回収をお話しされていましたが、今年は海外送金という内容でした。ここも、大きく変えられた印象です。
実はですね、去年から事業内容は海外送金を主にしていましたが、ビジネスコンテストにいらっしゃる方にとっては、馴染みが薄い話題ではないかと思いました。月謝の支払いであれば、分かりやすいと思って臨んだのが、去年だったんです。
ただ、課題感としては海外送金のほうが大きい。決済は機能ですから、これをどう使うかに尽きる。同じプロダクトで、月謝の引き落としにも対応できます。請求と支払のやり取りの中に、銀行を溶け込ませているのが我々の立ち位置です。皆さんに伝わるだろうかとちょっと心配がありながらも、市場の高いニーズ、私の経験が生きる取り組みとして海外送金を今回は前面に出して登壇しました。
2度目でしたが、もう足がすごい震えましたね (笑)。
―― 小西先生をはじめ、審査員からのフィードバックは今年、どう受け止めましたか。
小西先生には成長した姿を見ていただきましたし、田所さんからは鋭いご指摘をいただきながらも、我々が売りにしたいところを質問で引き出していただきました。ココを変えたらもっと良くなるよというご助言もあり、温かいご質問をいただけたと感じています。
「良いチャンス」…世界から人が集まるSusHi Tech Tokyoへの期待

―― 最後に今後の展望をお聞かせください。
今後は海外送金の領域に加えて、督促再請求の領域にもプラットフォームを展開していきます。いずれもB to B to Cのビジネスですので、企業活動の困りごとをどう解決していくのか。ここの解像度を高めながらお客様に提案を増やしていくことが重要です。そのためにも、困りごとを知っている営業のパートナーの方々とタイアップをしてプロダクトを広げていきたいと考えています。
そういった意味で、世界から人が集まるSusHi Tech Tokyoにブースの一角をお借りできることは、良いチャンスです。入金の消し込み業務は大変そうなイメージがありますが、経営者の目線では気がつかないんですよね。そこを可視化し、大変な業務から解放されることによって、より大事な業務に人が集中できるんだという考えをお伝えしていきたいと思っています。
また、我々のサービスは海外だと当たり前にあるサービスになります。使い慣れている海外の方からプロダクトのフィードバックをいただけるのではないかと、期待をしております。
―― 今後「銀行を使いやすくする」というミッションを、Pay By Bankというサービスで実現していくのか、それとも次なるアクションがあるのか。構想はどうお考えでしょうか。
いま取り組んでいる銀行振り込みを“使いやすくする”は、第一歩ですね。このほかにも、銀行にはまだまだ手の届かない課題となる領域があります。僕たちは黒子として入り、プロダクトを使って様々な銀行サービスに横串を刺して、使いやすくしていきたいと考えています。一例を申し上げれば、短期のお金の借り入れはユーザーと銀行の間でミスマッチがあります。そこを最適化できないか、いま研究をしているところです。
―― 最後に読者へメッセージをお願いします。長年、大手銀行で働いていた中からの起業でした。キャリアを積み重ねた方が一歩を踏み出すときに、何かアドバイスできることはございますか。
これは、我々のカルチャーですが、何とかなるは禁止なんです。何とかするんですよ。意志を持って諦めずにやれば、大体のことは何とかできますし、駅伝のように走っている人にみんな注目するので、助けてくれる人がついてきてくれるんですよね。
また、百発百中もあり得ません。行員時代に新規事業へ携わったとき、新しいことは千三つだと思ったんです。うまくいかないこともありますが、もう一度、次の打席をいかに早く見つけてバットを振れるか。世の中的にはコスパ、タイパと言われたりもしますが、この考え方も大事だなと思っています。
【イベント情報】SusHi Tech Tokyo2026
・日時|4月27日(月)、28日(火)9:30~18:30 ビジネスデイ <要 チケット購入>
4月29日(水・祝)10:00~18:00(9:30受付開始) パブリックデイ<無料解放>
・場所|東京ビッグサイト(〒135-0063 東京都江東区有明3丁目11-1)
>>受賞企業は、千代田区ブース内で事業紹介をいたします
イベントの最新情報は、公式ホームページをご覧ください(リンクは外部サイト)
お話を伺った企業

株式会社BANKEY
2023年9月設立。「銀行を使いやすくする」をミッションに掲げ、請求と支払い・消込が分断されている銀行振込の課題を解消する「Pay By Bank」(ペイ・バイ・バンク)を2025年にサービスローンチ。請求と支払いをつないで、消込を自動化できるようにした。今後、商標登録にともないサービス名称を「かんたん振込Pay」に。新しいキャッシュレス決済のインフラを目指していく。