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ビジネスコンテスト2024受賞者インタビュー|コンプライアンス・データラボ株式会社

2024年3月19日(火)、「千代田CULTURE×TECH ビジネスコンテスト 2024」を開催しました!

千代田区内のスタートアップが自身のビジネスプランをもとに外部審査員による評価を受けることが出来るだけでなく、資金調達やネットワーク拡大のきっかけを提供することでスタートアップのさらなる成長を加速させるために実施した本コンテスト。

事前審査を通過した登壇企業計7社の中から上位3社に「千代田CULTURE×TECH AWARD」と、5月に開催される「SusHi Tech Tokyo 2024 Global Startup Program」での事業紹介特典を進呈しました。

今回は上位3社に選出された株式会社コンプライアンス・データラボ株式会社の代表取締役・山崎博史氏に、コンテストの感想をお聞きするとともに、起業までの歩みや事業化までの苦労、今後の展望について伺いました。

コンプライアンス・データラボ株式会社 代表取締役 山崎 博史 氏

富士通、NTTデータにてシステムの企画、開発に従事した後、外資系コンサル会社にてリスクマネジメントに関するコンサルティングを多数の金融機関等へ展開。その後、約10年に渡り米国ダン & ブラッドストリート、東京商工リサーチにてコンプライアンス分野を中心にソリューション開発を推進。2021年4月コンプライアンス・データラボを設立。

・公認グローバル制裁スペシャリスト (CGSS)
・公認アンチ・マネーロンダリング・スペシャリスト(CAMS)
・米国ジョンズ・ホプキンス大工学修士(MSE)

外資系企業を経て起業…「この歳まで来てしまいました(笑)」

―― 国内外で様々なキャリアを積まれていますが、起業に至るまでには、どんな経緯があったのでしょうか。

もともと環境ビジネスで起業したいと思っていましたが、なかなか機会がありませんでした。その中でシステムの企画・開発や、リスクマネジメントに関するコンサルティング業務を経て、前職のダン&ブラッドストリート(外資系の企業情報提供会社/以下D&B)で日本のコンプライアンス管理が欧米の水準に比べてまだまだ十分ではない状況を知りました。そこを欧米並みに高めていけるよう日本でサービス展開をする役割で仕事をしていたのですが、日本独特の商習慣などでグローバルプロダクトが定着しなかったんです。

私もD&Bの本社に対して、日本の企業の役に立てる使いやすいプロダクトを開発したいという思いがあって、本社にも伝えていましたが、ローカライズしたプロダクトの開発は実現が困難でした。自分の思いや、年齢を考えて今後のキャリアを見据えたときに、そういう状況であれば自分で起業してプロダクトを開発しようと決めて、今に至ります。

―― 起業そのものは、若い頃から考えていたのですか。

起業はしたいと思っていましたが、私は保守的な面もあって一歩を踏み出せず、この歳(=40代後半)まで来てしまいました(笑)。

―― その一歩を踏み出して、この事業をやろうと自分の背中を押したものはありますか。

自分が考えたビジネスに確信を持てるかどうかだと思います。「もう絶対にいける」という感覚ですね。私は、D&Bでやっていた経験上、日本の商習慣に合うようにローカライズできれば、事業化が成功するという確信に至りました。

コンプライアンスチェックに必要な「実質的支配者」を見える化

―― 千代田CULTURE × TECH Awardを受賞された事業について教えていただけますか。

まず、コンプライアンスチェックが必要な場面は主に2つあります。ひとつは取引開始時、もうひとつは継続的な取引を行うためのチェックです。その2つに対応するために、私たちは3本柱でサービスを提供しています。

その1つ目が「コンプライアンス・ステーション® UBO」です。
コンプライアンスチェックでキーワードになるのが「実質的支配者」です。世界的にはUBO(Ultimate Beneficial Owner)と呼ばれています。対面のお客様に問題が無くても、その裏側にいる株主など実質的支配者は大丈夫なのか。コンプライアンスチェックでは、そこまで確認する必要があります。我々は国内最大級のデータベースを使って独自のアルゴリズムにより大量データを高速で処理して、お客様へUBOに関するデータを提供しています。これによって、情報収集率の向上やコスト削減、情報収集時間の短縮につながります。

2つ目は「コンプライアンス・ステーション® Connect」というサービスです。
企業様は、顧客のデータを持っていても名寄せができていない場合が多いです。自社内やグループ会社間でデータの管理がバラバラであったり、整理されていなかったりすると、取引先で問題が発生した場合、迅速な確認作業が難しくなります。相手先の実質的支配者は誰かという繋がりも見えないでしょう。このサービスは、そんな課題に対して我々のデータマッチング技術を使って名寄せを行うことで関係性を見える化し、企業様へデータをお返しするサービスです。この導入によって、正しいリスク評価やスクリーニング精度の向上、効率化、問題があった場合の迅速な対応が実現できます。

3つ目は「コンプライアンス・ステーション®️ リスク評価」です。
これは、対象企業に対し、情報収集、スクリーニングからリスク評価まで実施するサービスです。例えば、今まで、国の補助金提供先の事業者などに対し、コンプライアンスの観点であまりチェックが行われていませんでした。弊社では、対象事業者が行政処分を受けていないか、不正受給や反社等と繋がりはないかなど確認を行っています。従来の方法では事業者が提供する情報以上のものを取得することは困難ですが、当サービスでは補助金提供先の事業者情報を弊社データベースと突き合わせて、表に出て来ない実質的支配者を特定し問題がないか確認を行っています。お客様に代わり複雑なコンプライアンス管理業務を代行しますので、業務の効率化・精緻化につながります。

―― ビジネスコンテストの審査員より「データベースの充実と整備が大事」というコメントがありました。御社としても、やはりこだわりを持ってやっているのでしょうか。

我々は、東京商工リサーチの企業データベースをもとにデータソースを拡充し、データ同士の関係性を分析して、充実したデータベースを構築する技術を持っています。例えばA社と、A社と似たような会社があった場合、会社名、住所、電話番号などの項目ごとにマッチ率を評価してスコア化し、同一性の確率を判定するロジックを作っています。これはD&Bで培ってきた独自のノウハウを活用しており、現在もこのロジックは日々の運用の中で改善を続けています。

―― データベースの構築は、膨大な作業量だと思います。サービスのローンチまでに苦労したエピソードはありますか。

我々のサービスは、地方銀行との実証実験からはじまりました。大規模導入に向けたフェーズではデータベースも開発途上で、今でこそシステムを組んで自動化していますが、当時はデータソースから収集したデータ同士をメンバーがパソコンとにらめっこしながらつなぎ合わせていました。それはもう大変でしたね。計画的に1件、1件データベース化したのですが、作業していくうちに追加作業も出てきて……。1ヶ月半ほど納期がありましたが、最後の2週間は4人のメンバーで何万件ものデータを徹夜で対応しました(笑)。

でも、苦労した分気づきも多くて、のちに立ち上げた開発チームへの有益なフィードバックに繋がりました。データベース作成のシステム化に役立つ知見を得られたからこそ、今のサービスができたと思います。

―― サービス提供後、お客様からの反応はいかがですか。

例えば「コンプライアンス・ステーション®️ UBO」は、主に金融機関に導入いただいております。お客様には、実質的支配者の情報がなかなか把握できない課題がありました。特に新規口座開設後、UBO情報に変更が無いかチェックをするとき確認用の郵便を出すのですが、70%前後は返信が無いと言われています。その中で我々のデータを使っていただくと情報が取れるため、非常に喜んでいただいております。

また郵便の場合、発送準備や返送分のデータ入力など付帯作業が多く、時間もかかります。ですが、我々のデータベースであれば瞬時にデータを取得できるスピードも評価いただいております。業務の効率化や、データ収集の範囲拡大へ効果があるというメリットが浸透すれば、導入先がさらに増えていくのではないかと考えています。

緊張したビジネスコンテスト…この日に向けた工夫も

左:山崎氏 / 右:審査員を務めた、株式会社MMインキュベーションパートナーズ 代表取締役社長 宮地 恵美氏

―― そんなサービスで今回千代田CULTURE×TECH AWARDを受賞されました。少し時間が経って、改めてどういうお気持ちですか。

千代田区様には千代田ビジネス大賞(主催:公益財団法人まちみらい千代田)の特別賞もいただき、それに続いての受賞でした。他の登壇者さんが素晴らしいプレゼンテーションをされていた中で、このような賞をいただけて嬉しく思っております。

―― 今回、どんなきっかけでビジネスコンテストに応募したのでしょうか。

千代田ビジネス大賞に参加した縁もあり、千代田区様のスタートアップ支援に興味を持っていたのが、きっかけです。このような支援によりビジネスコンテストを通してネットワークができますし、賞をいただけると広報的なメリットもあります。現状、コンプライアンスチェックで実質的支配者までチェックが必要という考えが世の中に広まっていません。そのため私はこの受賞を通じて、その考えを訴求したいと思っています。

また「SusHi Tech Tokyo 2024 Global Startup Program」への出展機会を得られるのも応募のモチベーションになりました。SusHi Tech Tokyoの展示会を通じて日本の管理レベルを上げていく訴求をしていきます。

―― ビジネスコンテストに登壇した感想はいかがでしょうか。

非常に緊張しました(笑)。他の登壇者の皆さんへ審査員の方が鋭い質問をされていたので、自分の質疑応答にも不安はありました。そうした厳しい目で見ていただいた中で受賞できたことは励みになるとともに自信に繋がりました。

―― ピッチに向けては、準備をされましたか。

制限時間が5分と短いので、いかにポイントを伝えられるか。この工夫をしました。少し堅いビジネス分野なので分かりやすさを意識するとともに、親しみやすく感じてもらうために有名な漫画をモチーフにしたスライドも挟んでみました(笑)。

―― あれは少し唐突だと思いました(笑)。

そうですよね。コンプライアンスリスクに関するスカウターを作りたいというスライドを、この日に向けて作りました。

―― コンテスト終了後、審査員や登壇者、来場者と名刺交換やコミュニケーションできる時間がありましたが、いかがでしたか。

審査員の方からはフィードバックをさらにいただきました。今後ビジネスで考えていかないといけないところを指摘いただいて、勉強になりましたね。他の登壇者の方とも話ができてネットワークもできたので、同じぐらいのステージにいる企業同士、引き続き情報交換ができたら嬉しいです。

「起業を考えていたら、どんどんアクションを起こして欲しい」

―― 千代田CULTURE×TECHとしては、年齢や職業を超えた繋がりを持てるコミュニティを作っていき、区全体のスタートアップ支援に繋げたいという思いがあります。今後、当コミュニティへ期待することはありますか。

スタートアップ同士の交流会や、普段なかなか接する機会のない千代田区の皆様とお会いできる機会があると嬉しいですね。また、融資など制度面の情報を得られるとなお有難いです。

―― ありがとうございます。これから、交流ができる場をどんどん設けていく予定ですので、ご期待ください。それでは、今後の展望をお聞かせいただけますか。

大きく2つあります。ひとつは、我々の3本柱である「UBO」「connect」「リスク評価」のサービスを、SaaSと呼ばれるクラウドのオンラインサービス上で、一気通貫で提供ができるようにしていきたいと考えています。

もうひとつは、海外への事業展開です。具体的な計画としては、データベースの連携を考えています。すでにD&Bの本社から相談を受けているため連携が実現すれば、欧米中心にD&Bのプロダクト経由で、我々のデータが販売される状況になります。

また、日本での成功事例を持って、アジアでローカルに根付いたサービスを構築していく考えもあります。私のつながりを活用したパートナー企業候補がいくつもありますので、アジア各国でタッグを組んで事業を拡大していきたいと思います。

―― 最後に今後、区内で起業を考えている方に、メッセージをお願いします!

起業を考えていたら、どんどんアクションを起こして欲しいと思います。一方で、私は年齢を重ねてからの起業になるので、準備を重ねる時間があったのは役に立ちました。起業するときには準備期間を持ちつつ、東京都様や千代田区様の支援も活用して起業に向けて頑張って欲しいと思います。

お話を伺った企業

コンプライアンス・データラボ株式会社
データをつないで、見えないコンプライアンスリスクを可視化する。顧客、仕入先などの背後まで確認し、リスク把握の支援を行う。①データ取得支援「UBO(実質的支配者)」、②データ整備(名寄せ、関係性構築)支援「Connect」、③リスク評価支援「リスク評価」の3つのサービスを提供中。