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ビジネスコンテスト2024受賞者インタビュー|codeless technology株式会社
2024年3月19日(火)、「千代田CULTURE×TECH ビジネスコンテスト 2024」を開催しました!
千代田区内のスタートアップが自身のビジネスプランをもとに外部審査員による評価を受けることができるだけでなく、資金調達やネットワーク拡大のきっかけを提供することでスタートアップのさらなる成長を加速させるために実施した本コンテスト。
事前審査を通過した登壇企業計7社の中から上位3社に「千代田CULTURE×TECH Award」と、5月に開催される「SusHi Tech Tokyo 2024 Global Startup Program」での事業紹介特典を進呈しました。
今回は上位3社に選出されたcodeless technology株式会社の代表取締役・猿谷吉行氏に、コンテストの感想をお聞きするとともに、起業までの歩みや事業化までの苦労、今後の展望について伺いました。
codeless technology株式会社 代表取締役・CEO 猿谷吉行 氏
1993年より7年間、スキー場内のスノーボードスクールを経営し、2001年より三井物産ロシニョール株式会社やその他の複数の会社で新規事業の立ち上げと営業責任者を経験。2011年にスマートフォン修理会社のスマホステーション株式会社を起業し、10年間経営後、日本PCサービス株式会社(名証上場)に売却。2020年4月1日にcodeless technology を設立し、入力フォームの自動生成・データ管理ができるPhotolizeを開発した。
目的はDX推進。自身の経験をもとにサービス開発
―― 今回受賞された製品について教えてください。
弊社のサービスは、「Photolize」(フォトライズ)というサービスです。
ノンデスクワーカーの現場、店舗、工場、建設現場、病院や自治体の受付などで使われている書類をそのままデジタルフォームにしてデータベース管理ができるサービスです。
開発した目的は、日本中のDXを推進するためです。
自分自身が中小企業をずっと経営してきて、現場の運用もしていて大変だった部分を改善したいと思いました。
データを蓄積する際に、例えば紙に書いたものをエクセルに入力したりOCRで読み取ったりすると、確かにデータにはなっているのですが、統一性がないので集計ができないんです。何かを書くときに、赤というのを「赤」と書く人と「レッド」と書く人がいると、同じ意味合いの「赤」でも、「赤」が10個、「レッド」が5個のように、それぞれ独立したデータになってしまいます。そこの整合性をつけていかないと、経営判断やコストの効率化などの、いわゆるDXに使えないので、それを解決するシステムが必要なんです。
一方でシステムを入れると急に見た目が変わって使いにくくなり、現場に入れたときにどうやって使っていいかわからないというギャップが生じてしまいます。そのギャップをどう埋めて現場で働いている人たちに違和感なく使ってもらい、変更や改善もしていけるかを試行錯誤しました。
独自のルールがある現場に合わせたシステムを、汎用的に提供できるように工夫して開発したのが「Photolize」です。
―― サービスを開発するにあたって苦労したことはありますか?
大きく2つあります。
1つ目は、アイデアをシステムに落とし込む際に概念やコンセプトを理解してくれる人がいなかったことです。エンジニアさんからするとデータは収集さえできればいいので、書類や現場に合わせる必要性をなかなか理解してもらえなかったんです。最終的に頼もうと思った会社が、全然違うものや既にある他社サービスと全く同じものを作ろうとするなど、自分が作りたいサービスを理解してもらうことに結構苦労しました。
2つ目は、システム開発です。
社内でも、コンセプトを説明したら「よくわからない」と言われたので、じゃあ1回作ってみようと思いシステムを開発したんです。ですが、できあがったプロトタイプは自分の想像と違っていて、お客様に提供できる状態ではなくて。そんな状態から1年半ぐらいかけて、やっと人に見せて説明できる状態になったのが去年の夏ぐらいです。それからまたブラッシュアップしてという苦労がありました。システム開発は1回始めると止められず、費用ばかりかかるので大変ですね。今も苦労しています。
―― 周りに理解してもらうまでの試作品作りはお1人でされたのですか?
当時頼んでいた会社はありましたが、何度話しても話がかみ合わなかったため、知人を介してエンジニアを紹介してもらいました。それが現在CTOの中武です。プロトタイプで試しに作ってみましょうかという話から、はじめは外部パートナーのような関わりで依頼しました。プロトタイプができ上がると、中武本人も「これすごいシステムだぞ」と。「お金関係なく関わりたい、将来性もあるし面白いと思う」と言ってくれて。それなら役員になってくれと言って入ってもらい、いま一緒にやっている感じです。
―― Photolizeは現場によって見え方が変わると思いますが、お客様からいただいた書類などを、その通りに反映できるようなイメージでしょうか?
そうですね。データはPDFやExcel、Wordなどでいただいています。
ただ、本当はお客さんに合ったフォームを自動でAIが作るようにしたかったんです。
例えば現場の機械か何かを写真に撮ったら、「ここで使うんだったらこの方が合っています」みたいなオススメを出してくれて、AIが生成したフォームを使っていくと、各現場の使い方に合わせてさらに良い提案がされるようにしたいと思っています。土台として、まずは一番わかりやすく、いま現場が実際に使用している書類から始めている感じです。
―― 今後はサービスをアップデートしていきたいということですね。
そうなんです。なぜ書類からやっているかというと、システム制作のときに一番ネックなのが仕様書を作らなきゃいけないことだと思っていて。仕様書って、お客さんはシステム作りに慣れていないので、なかなか決められないんです。
そうすると、制作する側は仕様書を作る期間ずっと人が動くので費用をいただくことになりますし、初期の見積りの段階で、仕様書作成で延びた期間分のバッファも取らなきゃいけないので金額もどんどん高くなり、複雑になればなるほど、作った後にやっぱり違うと言われることが多いんです。
じゃあ仕様書をなくしましょうとなると、今度はお互い何かに同意して、これに対して作りましょうというものが必要です。その「何か」をどうするかという部分で、「実際に現場で使われている書類をデジタルフォーム化すること」と決めて、それを基にやっていけば、できあがりの認識の齟齬がないんですよね。更にそれを後から変更しやすいような形にしておけば改良も行いやすいと考えて、まず「現場の書類」から始めています。
「ちょっといい」くらいの、誰でも理解できるようなものを作る
―― 猿谷さんは元々スマホの修理業者をされていたということですが、Photolizeのようなサービスを作ろうと思ったきっかけやエピソードはありますか。
元々はスマホの修理屋をやりながらシステム会社を作ろうと思ったのですが、当時やっていた少し大きい仕事が急になくなってしまったんです。もう1回やろうかなとも思いましたが、再度立ち上げるよりも、僕自身の夢を叶えるためにはシステム会社に集中しようと思ったので、スマホ修理の会社を売却してシステム会社を作ることにしました。
一番初めは、「codeless technology」ではなく、「マニュアルつくり株式会社」っていう社名だったんです。通常のマニュアルは、現場の人たちは読まないんですよ。なので、何かがあったときに、あなたは次これをした方がいいと指示がくるというか、人が考えたり覚えたりする部分をサポートしてくれることをマニュアル化しようと思いました。
ですが、コンセプトを作っていくうちに、段々難しく、何かすごいものを作ろうとし始めている自分に気づいたんです。そうすると周りから理解を得るために時間がかかってしまうので、簡単に使えてあまり大したことのないものを作ろうっていうコンセプトで始めました。世の中で売れるものは、すごいものよりも、「ちょっといい」くらいのものの方が使われるし使いやすいので、誰でも理解できるようなものを作ろうと考えました。
―― 書類に慣れている方の場合、書類をパソコン上の作業に移すことに対して抵抗感があることも多いと思うのですが、導入いただくことはスムーズだったのでしょうか?
Photolizeは、タブレットでもスマホでも使えるので、パソコンを使っていない導入先もあります。導入してくださった方たちは問題なく使えているんですが、これだけ簡単にしてすぐ使えるようにしていても、導入に対するハードルはあるので、それをどうすれば良いかを思案している最中ですね。
自分自身を振り返ってみても、会計の仕事は某システムを使った方がコストも下がり、楽で簡単、無料でも使えるとわかっているのに結局全て税理士に頼んでいて。やっぱりそういうシステムを導入することってすごく難しいなと感じます。日本中のDXを推進させるために、そこの心理的なハードルをどうしたら下げられるのかを模索しているところです。
―― 長く利用されている方からのお声はいかがですか。
導入してみて、システムの使い方の説明が全くなく、変更があったとしても、みんなすぐに慣れて使えるのがすごく良いという声をいただきます。
あとは今まで見えなかったデータが可視化され、例えば人件費がかかっていた工場の場合、ラインごとにどうなっているのかが見えるようになったという声や、自社に合うシステムを探していて、これだとうちにぴったりという声もいただきます。
ピッチでは誰に何を伝えるかを意識して登壇
―― 千代田CULTURE×TECH ビジネスコンテスト2024に応募しようと思った理由を教えていただけますか。
少し前に山梨のアクセラレーションプログラムに採択されていて、その縁で今回のビジネスコンテストをご案内いただきました。受賞特典が、出たいと思っていたSusHi Tech Tokyo の出展ということだったので、応募しようと思いました。
―― 今回のビジネスコンテストは、募集から開催までの期間が短かったと思いますが、準備に影響はありませんでしたか?
僕は去年からいろんなビジコンに出て、ピッチもかなりの数をこなしてきたのですが1回も同じピッチをしたことがないんですよ。なので今回も使い回しではなく、今回用にアレンジしました。会場に着いてピッチのギリギリ1時間前ぐらいに仕上げた感じだったと思います。それまでずっと資料を作り変えていました。
ただ、数をこなして慣れたことで、ピッチの分数が大体わかるようになってきたんです。以前は分数がわからないので、ものすごい練習していたんですよ。ビジコンによって制限時間が様々なので。それが、いまでは「大体これぐらいだったらこれでまとめられるだろう」っていうのがわかってきたというのはありますね。
―― コンテストに登壇された際に意識したことはありますか?
当日に意識していたのは、どんな方がいらっしゃっていて、誰に何を伝えるかということです。千代田区内のコンテストなので、決められた時間内で千代田区内の人たちが僕と話してみたいって興味を持ってもらえるように、どうやって話すかを考えて登壇させていただきました。
―― 事前にリサーチをされていたのですね。
どんな人が審査員を務めるのか、どんな人が観覧するコンテストなのかは事前に確認していました。
ビジコンの性質的に、例えば投資家が多いのであれば投資家向けの内容にしますし、実際に事業をやっている人が多いのであれば、事業をやってる人向けにしますし、ビジネスマッチング的な要素が多いのであれば、ビジネスマッチングしやすいような話を入れますし、その辺を意識して参加させていただきました。
まずは100万人のユーザー獲得。海外展開も視野に「世の中に変化を起こしたい」
―― 受賞された感想はいかがでしょうか。
サービスを評価いただけて非常に嬉しいです。創業してからずっと千代田区で活動してきたので、区内でもいろいろと展開したいと思っていたところ、区役所の方などの繋がりもできたのですごく有難いなと思っています。
―― 受賞者特典として、5月に開催される「SusHi Tech Tokyo 2024 Global Startup Program」(以下SusHi Tech Tokyo)での事業紹介が進呈されました。展示会で期待していることはありますか?
顧客との接点を作りたいと思っていたので、実はもともと出ようかなと思っていたんです。年末にSusHi Tech Tokyoでのピッチ選考に申し込んだのですが、そちらは落ちてしまって。ブース出展の許可はいただいたのですが、いまの会社の規模だと出展費用もかなり負担になるので今回はやめておこうと思っていたんです。その後にこのビジネスコンテストを紹介いただいたので、受賞できて良かったです。
―― 今後の展望をお聞かせください。
まずは100万人の無料ユーザーをどうやって取っていくかを考えていて、その後は海外展開も視野に入れています。Photolizeは、単純にフォームを作って、それをどうやって管理するかなので。まずは日本の製造業の海外工場の管理などで使ってもらいたいと思っています。
システムとしては背景の上に入力枠を置いているだけなので、背景が例えばベトナム語だったらベトナム語の入力フォームを作れますし、タブレット入力ができる言語であれば、世界各国のフォームを作れるんです。そういうことを、コストをかけずにできるサービスってなかなかないですし、それで世の中に変化を起こしたいと思っています。
―― 最後に、これから起業を目指す人に向けて一言お願いします!
まずやってみるのが一番大事だと思います。自分で「これできるかもしれないな」と思ったら一歩動いてみる。動かないことが実は一番リスクなので。
結果としてお金がゼロになってしまっても、自分がやってきた経験とかはゼロにはならないので。ビジネスでお金がなくなるのは、散々あがいて、いろんなことをしてなくなるので、残っているものが結構大きいんですよ。
成功している人たちはみんな最初の頃に失敗したり、破産しかけたりして、その経験から最終的にすごく成功してることが多くて。やっぱり失敗しないと無理だと思います。
最近はネットで情報をいっぱい取れる分、情報過多になると人間って動けなくなるので、やりたいと思ったら動くのが良いと思います!
お話を伺った企業
codeless technology株式会社
中⼩企業が簡単にDXへ取り組める世界を実現するため「Make it Easy.」をミッションに掲げて、Photolize(フォトライズ)を開発。いつもの稟議書・請求書などの様々な書類の写真を撮って送るだけで、その書類と同じデザインのデータ入力フォームができる。