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「すき」「もやもや」「ひらめき」を形にする5日間~ミライをつくるプログラム~成果発表会を開催しました! 

2024年8月26日(月)「すき」「もやもや」「ひらめき」を形にする5日間~ミライをつくるプログラム~成果発表会をStartup Hub Tokyo 丸の内にて開催しました。

プログラムは千代田区内に住む中学生・高校生や、区内の学校に通う中学生・高校生が自身の「すき」「もやもや」「ひらめき」をアイデアにしていくもので、学校の夏休み期間中に区内コワーキングスペースや、大学を会場として約1カ月にわたり(8/1~8/26)活動を行いました。

中高生が参加したプログラムの詳細はこちらから

Day1では先輩起業家のIdein株式会社 中村晃一氏を講師に招き、起業までの道のりで「すき」「もやもや」「ひらめき」がどのようにつながり、ご自身がスタートアップ起業家としてのキャリアを歩みはじめたのかをお話しいただき、「起業」についての理解を深めました。

Day2からDay4の3日間は、株式会社エンターテインの常川朋之氏を講師に招き、アイデアを形にする方法を学びました。

講義を受け生徒たちは、身近な課題や自身の興味関心からアイデアを探し、参加者と意見を交換しながら、最終発表に向けてアイデアをブラッシュアップしていきました。

プログラム当日以外も、自身のアイデアのユーザーになり得る方々に対しインタビューやリサーチといった課外活動を行うなど、実践的な活動も行いました。  

最終日Day5の成果発表会では、リバティーンズ株式会社 代表取締役の山口雄大氏から基調講演をいただきました。その後、中高生の皆さんが、今回のプログラムで形となったアイデアを、先輩起業家ご家族が見守る中でプレゼンしました。その内容をご紹介します。

 

基調講演「起業家として大切なこと」 

山口氏は2007年からモバイルの広告代理事業と自社アプリ開発受託事業を立ち上げ、2022年には米国シリコンバレーオフィスを開設。日本で会社を経営しながら、米国で起業して事業を行っています。基調講演では「起業家として大切なこと」についてお話しいただきました。 

 基調講演講師・コメンテーター 

 リバティーンズ株式会社 代表取締役 

 山口 雄大 氏 

起業家にとって大切なことの1つ、自信。自信をつける行動指針とは?

━━ 山口氏 

アメリカで事業を立ち上げようと考えた時、意識して5つの“とりあえず”を実行しました。 

  1. とりあえず、アメリカへ行ってみた 
  2. とりあえず、会社を作り、ビザを申請してみた 
  3. とりあえず、仲間を集めてみた 
  4. とりあえず、情報を集めてみた 
  5. とりあえず、ビジネスを開始してみた 

この5つを行うには順番が大事。アメリカに行く前に色々な人に相談すると、良いこと悪いことも、沢山の情報が入ってきます。悪い情報を聞きすぎると行動をしなくなってしまうと思ったので、情報を集める前にとりあえずアメリカへ行ってみることにしました。 

もちろん「とりあえず = 怖い」と思いましたが、アメリカに行ってみたら様々な人に出会って仲間ができ、アメリカでのビジネスに失敗しないための情報を集めることができました。 

そして、その情報をビジネスに活かして事業につなげる。こうして“とりあえず実行した結果ビジネスを開始できた経験が自信になりました。とりあえずやるというのは、怖いという気持ちはありつつも挑戦するということ。 

ちょっと怖いと思うことに挑戦すること=ビビりチャレンジ 

 ちょっと怖いと思うことに挑戦することを、僕はビビりチャレンジと呼んでいます。 

怖いけどビビりチャレンジをやってみたら、こういうふうにできるんだとわかります。ビビったけど、乗り越えたら自信がつく。「起業家として大切なこと」は自信です。挑戦した回数だけ起業家としてのマインドセットができるから、ビビりチャレンジを沢山してください! 

参加者のアイデア発表

次に、プログラムに参加した生徒8名が観客に向けてアイデアを発表しました。

━━ Presenter1 暑さで「家から出たくない」という経験から考えたアプリ 

外が暑いから家から出たくないなと思ったり、熱中症気味かもと感じたりした経験から、涼しい休憩場所を作ることを提案しました。 

サービスはアプリで提供し、お客さんがいない時間帯のレストランの客席を休憩所として利用できるようにするものです。サービスを実施する場所は都会が良いと考えています。理由は、自分が伊豆に旅行へ行った際に田舎は木陰がたくさんあって涼しかったこと、都会はビルが多く木陰があまりなく暑いことから、涼しい場所に行きたいと考える人が多いと思ったからです。 

サービスの利用方法はアプリでQRコードを提示することで入店を可能にします。また、休憩場所の位置と人の混み具合もわかるようにします。ダウンロードは無料で、月額課金で継続利用ができるようにします。 

このサービスを行うことで、レストラン側はお客さんが増えて嬉しい。お客さん側は10分しか滞在できなくても涼しい場所で水が飲めて嬉しいと感じます。 

■コメンテーターの感想・アドバイス 

コメンテーターからは「場所を提供する側としてはその時は売上があがらなくても、ファンが増えるという点でメリットがある。また飲食を提供する以外でサービスを提供することで新たな収入につなげることができるかもしれない発想がおもしろい、実現できそうなアイデアだ」とのコメントがありました。 

━━ Presenter2 「いかに早く正確に文字を残せるか」から、音声入力商品を立案 

文字をいかに早く正確に残せるかということをテーマにしてプログラム取り組みました。今後はデジタル化むことで文字を書くという作業が減、最終的には音声入力になるという結論に達して、今回の発表になりました 

音声入力と聞くとすでに確立された技術ではないかと思うかもしれませんが、実はまだ確立されていません。音声入力の場合1分間に約300文字を入力できますが、文字入力はそれに劣ります。圧倒的に音声入力のほうが良いのになぜ一般に浸透していないのか自分の周りの人たちにアンケートを取りました。その結果、周囲の環境が一番の要因になっているということがわかりました。 

例えば会社で音声入力により文章を作ろうとした場合、周りに人がいると話の内容が漏れることが気になります。また、周りにいる人の音声まで拾って録音されてしまうと、文章の取り留めがつかなくなってしまいます。この課題を解決するために個別ブースを設置すれば良いかもしれませんが、コストが高くて現実的ではありません。 

そこで考えついた解決策は今ある技術を組み合わせて考えた「Cup Microphone」という商品です。カップ型の消音機の中にイヤホンのような小型のマイクが入っているシンプルなもの。参考にした技術は叫んだ声が外に漏れない「叫びの壺」という商品で、これを参考に外からの音が入ってこない商品を作りたいと考えています。 

競合としては、キャノンが「Privacy Talk」という価格が2万円程度のマスクを販売していますが、Cup Microphoneは想定販売価格を1万円以下に設定してまた片手で持てる商品のため、価格と利便性で優位性があると思っています。 

■コメンテーターの感想・アドバイス 

コメンテーターからは「日本以外の国ではボイスメモを使って、音声入力を利用する人が多い印象がある。海外の人は周りが気にならないなどの背景があり、ここに日本ならではの問題がある。解決方法は、今回の発表内容以外にも、もう少しパターンがあるのではないかと思う」とコメント。解決方法を広げた一例として「イーロンマスクは脳にデバイスを埋め込んで、思考だけでコンピューターを操作できることを目指してい。ものを使わないで伝えるというサービスを考えれば革新的なものになるのではないか」とのお話が寄せられました。 

━━ Presenter3 自身のアレルギーの経験から、ショッピングアプリを開発 

自分が卵などのアレルギーを持っていた経験から、アレルギーを持つ人が便利で生きやすい社会にというテーマで取り組みました。 

日本の全人口のうちアレルギーを持つ割合は、1~2%で、乳幼児は10%がアレルギーを持っていると言われています。食物アレルギーを持つ人にアンケートを取ったところ、買い物時に食品表示を確認すること時間がかかる、他の人に迷惑をかけてしまう、アレルギー対応食品を求めて何軒も店をまわることに困っているとの回答がありました。食品表示を見ることによってどのぐらい時間がかかるのか実験を行ったところ、食品表示を見ない場合に比べて約4倍の時間がかかることがわかりました。またアレルギーを持つ人は外食時に飲食店等で提供される食事に食品表示の義務や推奨がないことでも困っています。 

そんな悩みを持つ方のために考えたサービスは「アレグルー」というアプリの開発です。アプリに自分のアレルギーを登録することで、アレルギー対応食品を検索してネットショッピングができるようにします。アプリでは飲食店のアレルギー対応メニューのレシピも提供します。 

どのように利益を得るのかは、仕入れ値とユーザーが購入する価格に差をつけることで利益をあげます。また、関連商品を取り扱う会社から広告収入を得ることでも利益を得たいと考えています。関連商品の広告を載せることでアレルギーへの理解を深めることもでき一石二鳥です。 

この事業が目指すゴールは、アレルギーを持つ人が便利で生きやすい社会を作ることです。社会全体のアレルギーに関する理解を深め、アレルギーを持つ人が他者とのギャップを感じない社会を目指していきたいです。 

■コメンテーターの感想・アドバイス 

コメンテーターからは「アレルギーは世の中にある課題の中でもなかなか手を付けられていないところだ。誰を最初に助けたいのかを考え、最も課題に関連が高い人からアプローチしていくとビジネスになるのが早いのでは」とのコメントがありました。また「一定数の需要はあるので、ぜひ事業化してほしい」とのエールも寄せられました。 

━━ Presenter4 「勉強させない学校」を目指す先に

させられる勉強ではなく自分からの学びで多様性がある社会を実現したいという想いで取り組みました。今の教育は大人が責任を持ち、大人が考えた学校という中で育てられます。 

しかし、教育は子供たちがしたいと思ったことを、子供自らがカリキュラムを立て、自分の責任でやっていくことが良いと思います。私たちは何をしても学べるし、どこでも学べる。学びたい時に学べば良く、小学校1年生で学校に入学して大学4年生まで勉強して社会に出る必要はありません。人生の中で好きな時に学び、好きな時に働いて生きるのが良い考え「勉強させない学校」を立案しました。 

「勉強させない学校」が目指すゴールは、多様性。これにより教育による人の統一がされず、より多様性のある社会を実現でき、普通というものがない社会ができます。普通という基準は普通である人を守る一方で普通でない人を見放してしまう場合もあるので、普通をなくしたいという想いから、発表をしました。 

■コメンテーターの感想・アドバイス 

コメンテーターからは「多様化を求める一方で昔から教育は変わっていない。効率よく多くの人に教育を行うことと多様化にはズレがある。教育分野ではこのズレの部分に手の届いていない方がたくさんいると思うので、サービスが必要だと思う。自分で自分の学び方を決めるのは大事だと思う」とコメント。さらに「アメリカには親御さんが子供に教えるホームスクールという教育の形がある。学校に通わず自宅で学習を進め、カリキュラムを終え合格すれば進級できるというもの。教育はいろいろなやり方があるので世の中にどんなサービスがあるか、もっと調べていくと良いサービスを生み出せるのではと思う」とアドバイスが寄せられました。 

━━ Presenter5 面倒くさい宿題を楽しいものにするアプリ 

宿題をもっと楽しいものにしたいというテーマで取り組みました。 

中学生に宿題についてのアンケートを行ったところ、宿題が好きな人は17人中4人、宿題に意味があると思っている人は17人中15人大きな差があることがわかりました。意味があることはわかっていても、好きではないと思っている人が多い。楽しんでできない理由は時間がかかる、面倒くさいから、宿題より楽しいことがあるからという回答でした。 

そこで、楽しみながら宿題ができれば良いのではないかと考え、ゲームのように楽しみながら宿題ができるアプリを開発しようと思いました。現在ゲーム形式でできる勉強アプリはたくさんありますが、個人の宿題に特化したアプリはありません。アプリに宿題を登録して宿題の計画を立てると、AIがその人に必要なフィードバックを与えます。宿題が終わるとレベルアップするなどのゲーム形式にし、オプションでわからないことは質問できるようにします。 

競合するのは個人向けの学習塾になるので、塾よりも安い月額料金で提供します。中学生向けの学習塾の月額料金は2万円と言われているので、それよもずっと安く誰でも使えるものにしたいと考えています。 

目指すゴールは全国の学生に使ってもらうことです。生徒個人での利用が増えた後に、学校向けに改良して先生が宿題を登録できるようにし、質問する相手も先生という形にしたいと思います。 

■コメンテーターの感想・アドバイス 

コメンテーターからは「宿題をやらない人が何故やらないか、宿題をやっている人が何故やるのかを深堀りすると良いと思う」とコメント。その具体例として「仮に宿題をしている人が親のサポートがあるからできていて、やらないの理由が一人だからできないのであれば、宿題サポーターのような人がいることで状況は変わると思う。宿題サポーターの役割を親ではなく、アプリのサービスで補完できると感じれば保護者はアプリに料金を払うだろう」とお話がありました。 

━━ Presenter6 「学校で先生が見つからない」を解決する 

プログラムでは、中学生・高校生学校で先生見つけられないという課題に取り組みました。課題解決方法として、位置情報をリアルタイムでモニターに表示する「Teach Spot」というアプリの開発を思いつきました。 

きっかけは自分の学校生活で、用件を先生に確認するために校内を15分探しまわっても見つからなかった経験からすぐに先生の居場所がわかれば良いと思ったことです。生徒にアンケートを取ったところ、31人中30人が同じ課題を抱えていることがわかりました。また38.7%の人が先生を探すのに5分~10分、29%の人が15分以上かかったと答えました。授業間の休み時間は10分または20分なので、先生を探すだけで休み時間を使い切ってしまいます。 

「Teach Spot」があれば時間の節約、緊急時の迅速な対応、効率的なコミュニケーション、生徒のストレスの軽減というメリットがあります。実現方法は、先生の位置情報をモニターに表示し居場所がわかるようにします。利用料金は一人の先生を探すのに300円課金する施策をまずは行い平均値を出した後、月額プランでサービス展開できればと考えています。まずは都内の中学高校でサービスを行い、会社での運用もできるようにしていきたいです。 

■コメンテーターの感想・アドバイス 

コメンテーターからは「アンケートで同じ課題を抱える人が30人もいるということが客観的にわかり、5分から15分ロスしているということは課題が明確なので解決が必要だ。事業は課題と解決手段の組み合わせ。解決手段が他にあるかもしれない」とコメントが寄せられました。 

その解決手段のひとつとしては「会社でも上司がつかまらない問題があるが、オンライン上で解決できることもある。最近はテレワークを導入する企業が増えチャットで人をつかまえて用件を伝える人が増えているが、チャットだと煩雑になってしまう一面もある。そこでオープンアワーを管理するシステムを作ってはどうか。オープンアワーとして、この時間は話かけても良いという時間を共有し、その時間に集中して先生と生徒が用件を済ませるようなサービスを展開すれば学校や企業で事業が拡大できるのでは」とアドバイスされました。 

━━ Presenter7 リカちゃん人形から着想を得たアバター制作ソフト 

メタバースの世界で使うアバター制作ソフト「3Dモデルクリエイター」の開発を提案しました。 

アイデアはリカちゃん人形から。人形服やアクセサリーを変えるように、選択肢から洋服や髪型などをカスタマイズできるというものです。ソフトはSteam(オンラインゲーミングプラットフォーム)で販売し、細かいディテールや技術を要する素材は課金制とします。また定期的にアンケートを実施してユーザーに欲しいものを尋ね、多かった意見を参考に追加する素材を決めていきます。ユーザーの意見を反映することでより多く人の好みに沿ったキャラクター制作に貢献できると考えています。 

現在の3Dモデリングの費用相場は既存アバターで数千円から10万円、カスタムモデルで5万円から100万円と高額です。「3Dモデルクリエイター」は、少ない費用で簡単にアバターを制作することができ、相場より安く提供できると考えています。 

■コメンテーターの感想・アドバイス 

コメンテーターからは、「3Dモデリングや3DCGアニメーションを制作するBlenderというツールがある。Blenderはゼロから作っていくものだが、そうではなくある程度できあがった素材を提供するのであれば、Blenderを利用する層とは違うところにターゲットを絞ってサービス展開を考えるといいのではないか」とのコメントがありました。 

━━ Presenter8 絵の具関連画材のサブスクリプションサービス 

プログラムでは、絵を描く時に面倒だと感じた経験を課題に設定して取り組みました。 

色をつけたくない場所にマスキングテープを貼る作業では、曲線にテープを貼るのが難しく面倒です。学校の友人に課題について聞いたところ、同じような経験をしている人がいました。色をつけない方法として他に、マスキングシートとマスキングインクがありますが検索でヒットする数は少なく、課題を解決する商品が世の中に浸透していないのではないかと思ったことから、絵の具関連画材を学校や施設にサブスクリプションで提供することを考えました。色を塗る時間をマスキングシートやマスキングインクなどを使って削減できれば、授業時間内で絵の具を塗る作業が終わらず補習を受けなければいけない生徒が減り、先生の負担も減ることが期待されます。 

■コメンテーターの感想・アドバイス 

コメンテーターからは「一部の人が求めるニッチなサービスかもしれない。サブスクリプションで考えると薬箱のように使った分だけ補充するというスタイルが良さそうだ」とコメントがありました。また「画材だけでなくボールなど学校で使うもの全てを取り扱うようにすれば需要があるのかもしれない」というアドバイスもいただきました。 

総評 

最後にDay2からDay4まで講師であり成果発表でコメンテーターを務めていただいた株式会社エンターテイン 代表取締役CEO 常川朋之さんと、基調講演およびコメンテーターを務めていただいたリバティーンズ株式会社 代表取締役 山口雄大さんより総評をいただきました。 

 

━━ 常川氏 

Day1の時点ではアイデアがなかった方、やりたい事が決まっていた方、アイデアがあるけどまとまっていない方など様々でしたが、それぞれがプログラムを通してアイデアを形にして取り組めたことがよかったです。自分の興味関心のあるものをどんどん行動につなげていってください。 

 

━━ 山口氏 

自分にとって障害になることにチャレンジすることは起業家が持つマインドセットにつながりますこのプログラムに参加している時点で1つのチャレンジが出来ているので、これからもぜひ紡いでいってください。 

夏休みの5日間を通して行われた、すき」「もやもや」「ひらめき」を形にする5日間~ミライをつくるプログラム~。 

 

今回のプログラムで得たつながりやノウハウを活かしながら、これからも自身の興味や関心を大切にし、様々なことに挑戦していって欲しいと思います。